同じ著者の「戦国の合戦」が面白かったので、本書も読んでみた。歴史関連の著作には、さして根拠があるわけでもない自説ばかり強調した偏った記述のものも散見されるが、この著者の本はそうではない。視野が広く、いろいろな他の研究者の説にも幅広く目を向けて紹介した上で、自説についても言及している。おそらく研究者同士のネットワークを大切にしているのだろう。また、確実なことと推測に基づくことを確度にしたがって書きぶりできちんと分けて書いてある。それらの点から、比較的安心して読める。
著者は戦国の城についてまったく実態とはかけ離れたイメージを持っている多くの庶民の立場に立って、わかりやすく、具体的に、いろいろなデータや考証を行って説明してくれている。新書サイズながら、写真や図や地図も多い。
城のイメージを一変させてくれるだけでなく、なぜそのような構造になっているのか、そのような場所が選ばれるのか、守り方、攻め方、各部分の作り、発展の歴史、人足の集め方、技術、連絡方法、タイプ別の特徴、城下とのかかわり、人柱神話に至るまで結構多岐にわたってもれなく説明されていて、歴史に関心のある方には必読の一冊といえるかもしれない。なるほど、城というものは本当はこういうものだったのか、と思う。実際、城というのが誰によって、何のために作られ、どう使われたのか納得すると、後世に作られた一般的に広く信じられている城のイメージの方がちょっと滑稽に感じられてくる。いずれにせよ、面白かった。おススメである。