戦国武将たちの織り成す群雄伝として語られがちな中世の日本。だが、普通の村人たちは、決してただただ戦禍に涙し、重い年貢に苦しむ受動的存在ではなく、また、領主たちは決して村々を専制的に掌握・支配していたわけでもなかった。本書は、山村で生まれ育った自らの個人的境遇と関心からスタートした著者が、中世日本における、普通の村の人々のエージェンシー、(著者の言う「村の自力」)を再検証しようとするものである。中世の村々は、水や山の用益権を巡ってしばしば生じる近隣の村との争いにおいて、決して我々がテレビの時代劇でイメージするような、ただただ領主に裁定を求めるような、あるいは両成敗として一方的に鎮圧されてしまうような存在ではなかった。本書では様々な視角から諸文献を読み直し、中世の村々が日常的に発揮していた主体的紛争解決の作法の諸相が明らかにされている。村独自の武力とその運営の仕組み、無用な暴力の応酬を回避するための作法、犯罪への対処、領主政治にも意外に深くコミットし、イニシアティブを発揮していた在地百姓たちなど、活力に溢れる村の姿が生き生きとここに示されている。非常に興味深く、へえって感じで興味深く読める。87年に刊行された古い研究だが、こうして平凡社ライブラリー、講談社学術文庫と、二度に渡って再版されるのもうなづける。