無条件で毎回★★★★★の賛辞をしているこの『論創ミステリ叢書』。角川のようなテキスト改竄など一切無く、初出に基づき手間暇かけた作品発掘・校訂・解説に加え上質な製本。
ミステリー界、いや出版界で何らかの賞を受けても全くおかしくない叢書なのだ。
だが本書第50巻を迎え刊行休止、しばしのお別れ。非常に残念でならない。
作品半ダースに満たない幻の作家4人。過去にも徳富蘆花・三遊亭円朝のような「これ誰が読むんだ?」的な変化球があった。
あれはきっとプロパー以外の新規読者を狙ったものだと思うが、今回は御得意様読者向けの変化球。
この中で頭一つ抜けて良いのは小酒井不木の流派にある残酷医学の米田三星。「森下雨村さんと私」も非常に重要な随筆。次に「監獄部屋」「越後獅子」の羽志主水。
水上呂理は木々高太郎に先んじたフロイト指向。
星田三平は脱力ものが好きな人ならいいかも。フィロ・ヴァンスとカポネが闘争する「米国の戦慄」、ボクシングもの「もだん・しんごう」とか何だかなぁ。
マニアックな出版社の宿命か、今回の休止は売上・経営的立直しによるものなのだろう。ならば本巻は同じ変化球でも何故売れる作家にしなかったのかな?
(「諏訪未亡人」「吉祥天女の像」「越中島運転手殺し」「朝から夜中までの彼と彼女」「一九三二年」「三太郎とヘナ子」等を集めて『横溝正史連作集』とか)
採らるるべき作家は守友恒・蒼社廉三・大河内常平などまだまだ数多といる。これだけの規模になってきたから乱歩と久作の巻も欲しい。
(実際彼らの小説はあらかた発掘されており『江戸川乱歩名義代作集』とかなってしまいそうだが)
最近の傾向として『日本SF精神史』とかSF評論に良いものが多いのだから蘭郁二郎南澤十七そして海野十三、この辺のSF系探偵小説に光を当てる時期なのでは?
大下宇陀児のSFものしかり昔から横田順彌氏らが指摘しているではないか。
とにもかくにも、少しでも早い続巻発売を切望する。微かな安心材料として編集サイドが「期を見て是非再開させたい」と言ってくれてるのが救い。
今後暫くは姉妹叢書となるのか「少年探偵小説シリーズ」刊行が予定されている。現在判明しているのは山田風太郎・鮎川哲也・高木彬光・仁木悦子。
でもこれって日下三蔵が数年前からプレゼンしていた企画じゃないの?
少年物に的を絞るのはイイと思う。ただ今のところ戦前作家と作品は候補に挙がってないそうで・・・。