原爆投下に関わる62個の見解(俗説?)について、論理学のハサミを使ってぶった切っていくという内容です。読んでみると意外と面白いですし、また、書かれている内容にも同意できます。なんとなく抱いていたモヤモヤについて一つの結論を提示してくれる本です。
このような良書こそ、もっとキャッチーなタイトルで広く読まれて欲しいのに、敷居の高いタイトルと素っ気無い装丁で損をしている気がして、もったいない気がします。(よく売れてるのでしたらスミマセン)
が、ちょっと引っかかる点があります。
「仮に、この問題について、このような前提でこの観点から考えれば、一応はこういう結論になる」ていう話なら、おっしゃるとおりです(そこで間違えてるようでは話にならんでしょうが)。でも、「この問題についてはこれが結論である。そう判断する前提はこれで、根拠はこうだ。」と言われると「ちょっと待てよ」という気分になります。
62種類のハサミについてハサミの選択は適切か、また、考慮すべき前提情報の範囲は適切かについては、文章からはなんとも言えません。著者が選択して設定した土俵でなら、勝つのは当然でしょう。
まあ、ハサミについては、論理的に正しい言説は全種類の論理学のハサミをクリアーするはずですから、どれか一個に切られれば、論理学的にはアウトでしょう。でも…そもそも、こういった政治的な主張について、完璧に論理的なものがどれだけあるのかというと…どれも大なり小なり矛盾を抱えていて、可能な選択肢の中からベターなものを選べれば御の字じゃないでしょうか?
次に、前提情報については、それが適切かどうかは保証の限りではなく、読者の歴史知識で判断せざるを得ません。ある主張について、主張者が考慮し重視していたのにこの著者が無視してしまった前提情報があれば、結論の説得力は揺らぐでしょう。もっとも、私がざっと読んだ限りでは、最初に同意と述べたとおり、おかしな点は見つけられませんでしたが…
さて、そう考えると、この本は、「原爆について流布している見解の誤謬を正す」というにはやや足りてなくて(その切っ掛け、一石ではあるとしても)、「歴史を題材にして論理学を学ぶ・応用してみる」という応用論理学の本だということになりますかね。
で、そういう観点でタイトルを見ると…まったく適切なタイトルというべきですかね? うーん…
最後に、この本を読むにあたっては
暗闘―スターリン、トルーマンと日本降伏が必読と思います。あと、
戦争倫理学 (ちくま新書)も。。。