450ページを超える大著だが、一気に読ませる面白さである。描写はリアル、分析は明解で、歴史的な出来事をまるで見てきたかのように描く手腕はなかなかのもの。兵器そのものや科学技術だけでなく、当時の戦況、政治的背景などもわかりやすく書かれ、世界史の流れも頭に入る。「エンジン」の語源はギリシャ語の「兵器」など、思わず「へぇ」とうなってしまう「うんちく」も随所に散りばめられている。文章のトーンはまったく異なるが、膨大な資料をもとに、カビ臭くなりがちな歴史を鮮やかによみがえらせる語り口は司馬遼太郎に通じるといっても過言ではないだろう。
ヒッタイトの古代戦車に始まって、ギリシャの科学力を総結集したカタパルト、シャルル7世の時代にフランスが完成させた大砲、スペインの無敵艦隊を破ったイングランドの軍艦、そして第2次世界大戦でのコンピューターや原爆等々。本書に登場する数々の歴史的兵器が、すべて最先端の科学を駆使して開発されたものであり、あるパターン――敵を確実に倒す「最終兵器」として登場し、しばらくの間戦場を支配するが、やがてより優れた対抗兵器に取って代わられる――を踏襲しているのは偶然ではない。古代から現代まで無限に繰り返さるこのサイクルが科学を発展させた原動力であり、「事実上、現代科学のすべてが根ざしているのは戦争」という歴史の教訓なのだ。
知的好奇心に基づく純粋科学と、戦争に使われる応用科学(テクノロジー)は別という主張もある。だが、著者はそんな甘えを一蹴する。偉大な科学的発見を支えてきたのは、戦争に勝利すべく総力を注ぎ込んだ国の力である。歴史を振り返る限り、残念ながらそれは動かし難い事実のようだ。(齋藤聡海)
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前半は古代から、中世、近世を描き、歴史の転回点となったような有名な戦いを事例に引いていく。歴史的な戦いの影には、エポックメイキングな兵器があったという。
古代エジプトの戦車(チャリオット)、ヒッタイトの鉄製武具にはじまり、古代ローマの攻城兵器、中世イングランドの長弓、火薬の発明、大砲の発展が城の概念を変えていったこと、小銃の発明、ガレー船、大航海時代の帆船、弾道学、無線機、飛行船、飛行機、戦車、潜水艦・・・。点描的に取り上げられる戦いの描写、題材にあげられる兵器の発展の記述は興味深い。一方で兵器の優劣だけで勝負が決したかのような説明になっている部分は牽強付会な印象も受けた。
長らく西欧の国々より文明度では優れていたはずのイスラム諸国や中国が西欧に圧倒されたのは、科学の発展に対する姿勢の違いだという指摘は首肯。
後半は20世紀以降を描き、核兵器、ロケット(兵器)、化学兵器といった軍事技術の開発に携わった科学者たちを題材に人物名を挙げながら検証していく(日本からも、満州の731部隊が取り上げられる)。
さらに現在でもアメリカを中心に膨大な軍事費用が兵器開発に向けられており、その開発成果の一部が民間に転用され、私たちのの生活に寄与しているという事実は改めて見せられると驚きだ。
全体に平易な文章で読みやすい。新たな視点・考え方が記述されるわけではないが、興味深く読めた。記述は時系列ではなく、断片的なため、世界史の知識があるとより楽しめる.
P.S.
本の内容は、専門的な用語も少ないため、その手の予備知識がなくても楽しめると思う。
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