シニアになってかなりの、今頃、生まれてからこの方のわが国の歴史をあらため
て、知りたくなった。まあ、よく知らなかったこともあるが、年をとったせいか、
なんだか、明治以来、膨張してきた理由が知りたかったのである。
さて、明治以来のわが国の膨張主義=植民地獲得主義は、どうして発生したのだ
ろうか。そしてまた、政治的=軍事的なリーダーだけでなく、普通の民衆が、なぜ、
植民地主義を受け入れたのか。
このことが、現代史の一番の問題と思われるからである。
そもそも戦争には、「名分」と「利益が得られること」が必要と思われるのだが、
それぞれの戦争の「名分」は、どうして保証されたのか。
本書は、こうした疑問を実に明快に解明する。
本書の一番の特徴は、明治の政治的指導者だった山形有朋が、1988年欧州調
査旅行に赴いた時、オーストリアのローレンツ・フォン・シュタインから教示された
という国際政策における「主権線・利益線」の考えをキー概念にとりあげられたこと
である。
国家の領土・主権を守る上で、その周辺領域が当該国の運命をきめる利益線=
生命線として重要だという政治思想が、日清戦争以来の日本の戦争を合理化す
る基軸となったという「説明モデル」である。つまり、「名分」である。
本書は、この「説明理論」をベースに第2次大戦への突入までが解説される。
国民の側では、日清戦争時の講和による賠償金や領土[台湾など]が、乗数効
果的に「国民」に分配された経験があり、これが肯定的に働いた。
追加]
少し長くなりすぎだが、明治以来の日本の戦争にほとんど詳しくないシニアの私に
は、はじめて知ったことが多く、面白い本でもあった。
たとえば、吉田松陰が、朝鮮との関係について、天皇親政が行われた古代の三韓
朝貢を理想のイメージとし、朝鮮服属を日本本来のあるべき姿としてえがいてい
た、などである。