まず、この本のサイズと装丁の鶴田吾郎《神兵パレンバンに降下す》の美しさが特筆モノ。確かに価格は張るが、内容は非常に充実している。小磯良平、宮本三郎、向井潤吉、川端龍子ら錚々たる戦争画のビッグネームの代表作に加え、これまで見た事の無かった作品も相当数カヴァーされている。北脇昇、北川民次、山下菊二、井上長三郎、須田国太郎といった意外な画家の作品も収録されている。何よりも有り難いのは、「現所在不明作品」も多数図版(カラーを含む)が収録されている事。そこには白黒図版ではあるが、吉原治良、松本俊介、丸木俊らの作品まである。
唯一残念なのは、著作権継承者の許可が得られなかった為、藤田嗣治作品のカラー図版が収録されていない点だ。しかし、巻末の藤田作品解説には他の書籍で見る方法が極力記されているのは良心的である。又、藤田代表作の何点かは巻末解説に小さい白黒図版が付されている。
解説も充実していて、現時点で望みうる最も包括的な日本の戦争画集成であろう。