筆者の馬場マコト氏は、JAAA(日本広告業協会)第4回クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞の他新聞協会賞、ACC賞、電通テレビ部門賞、ロンドン国際広告賞など、国内外広告賞多数受賞している広告業界ではとても有名な方です。
広告という創造的な仕事に携わってきた方たちが、戦時中にどのような思いで戦争に関わり、その中で仕事をしていったかを多くの資料やエピソードを挿入しながら、臨場感あふれる描写で展開した本でした。どうしても広告業界寄りの視点で書かれていることを理解したうえで読まないといけません。
キャッチコピーという概念やイラストレーターという職業がない時代の言わば日本の広告の創世記にその業界に身を置いた青年たちの苦悩と意欲が書かれており、読み物としても興味深いものだと思います。
内閣情報局から戦意高揚を図るポスター制作とそれに関わるイベント企画立案といった仕事にそれぞれのクリエーターは果敢に挑戦しました。その仕事の是非を問うのではなく、今でもイメージが浮かぶ「資生堂スタイル」を確立したアールヌーボー調の山名文夫たちの生き様を浮かび上がらせることに主眼を置いていました。
9ページ掲載のイラストとコピーが全て同じ人物によって生み出されたことを思うと戦時中の過酷な厳しい状況にあえて挑戦した山名文夫を通して「いつの時代も、どの国にあっても、時代と並走することでしか、生き残る手段がないのが広告だからだ」という一文が本書の基調として感じられました。後世の批判は当然受けるわけですが・・・。
有名な人々が数多く登場しています。その中の林謙一氏が戦後「おはなはん」の原作者として自分の母を描いていたことを本書で知りました。
本書の章立てです。三つの文章と三点の図版、プラトン社と岩田専太郎、「NIPPON」と名取洋之助、資生堂と福原信三、森永製菓と新井静一郎、報道技術研究会と山名文夫、情報局と林謙一・小山栄三、大政翼賛会と花森安治、それぞれの戦後。