「歴史探偵」を自称する著者が、戦前の日本を代表する言論人であった石橋湛山の「反軍」、「反体制」の活動がどのようなものであったかを描く一冊。
全編で、実業家や銀行家向けの経済専門誌であった「東洋経済新報」を拠点とした石橋の自由主義経済と国際協調、そして、軍縮への提言が取り上げられ、当時の軍部や大新聞の動きと対比されている。
歴史の転換期において石橋がどのようにして日本の国益を維持しようとしたかが克明に記されている、という点は、本書の最大の特徴であり、評価点である。その一方で、石橋の事績を挙げて、その先見性を強調するという著者の態度には同意しかねるものがある。
何故なら、石橋湛山の所説の意義がその先見性にあったのなら、結局のところ石橋湛山は予言者や占い師と同様に、「言っていることが当たったから凄い」という人物になってしまうからである。
委曲を尽くして石橋湛山像を描き出しても、これでは竜頭蛇尾に終わってしまうというものだ。
その意味で、本書は筆致の鮮やかさに結論が追い付いていない、ということになるだろう。