惑星(宇宙)物理学者である著者が、地球をシステムとして捉え、宇宙から地球を俯瞰するマクロ的観点から量子レベルのミクロ的観点までの幅広い視野で地球・文明論を語った書。昨年の東日本大震災を受けて執筆した物の由。「人間圏」、「分化」、「関係性」、「駆動力」、「認識」、「言語」等がキーワードとなっている。NHKの番組で初めて著者の"水惑星理論"に接して感動を覚えてから随分と時が経ったが、本書は著者の集大成的著作と言って良いのではないか。非常に平易な文章と多様な具体例を用いて著者の思いの丈が縷々と綴られている。良い意味で老成した感がある。
人間が通常の「生物圏」から「分化」して「人間圏」を作った事が、現在の環境・エネルギー・人口等の諸問題を招いているとの論にはさほどの新規性は無いが、ここで著者が考える「人間圏」とはその外部(この場合宇宙)からの視点を持った世界である。ここに本書の独自性がある。そのため、「辺境から文明を眺める(ゴーギャンからの引用)」との一貫した姿勢が本書を貫いている。更に、「人間圏」システムにおける構成要素間の「関係性」を重視している点が、如何にも長年「地球のかたち」を追求し続けて来た著者らしい。その上で、「人間圏」が存在する意味、即ち「我々とは何か」を問い続ける事の重要性を訴える姿勢に共感を覚えた。特に、"持続可能"な「人間圏」とはビジョンではなく、上述の問いを発し続けるための方策という考え方には虚を衝かれる思いがした。また、"持続可能"性に関連して、太陽光発電(実はエコでもクリーンでも無い)や火力発電の利用が地球を金星化するとさりげなく語る辺りには、説得力と静かな迫力とを感じた。
題名は、外界と関わる事で「我が作られる」の意で、作者の思惟が脳医学や生物学にまで及んでいる事を窺わせる。「内部モデル」に関連したウィトゲンシュタイン哲学の引用も印象に残った。また、本書は科学・思想史の優れた概説書ともなっている。人間が現在の文明(観)を抱くに到った経緯の科学・思想的背景を俯瞰するにも好適である。「知の体系化」を謳い、「チキュウ学」の確立を図った快著だと思った。