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我等、同じ船に乗り心に残る物語―日本文学秀作選 (文春文庫)
 
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我等、同じ船に乗り心に残る物語―日本文学秀作選 (文春文庫) [文庫]

桐野 夏生
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

最近の私の好みは、「生々しい小説」に尽きる。良くも悪くも、作者の生理が感じられるもの―。衝撃の書を世に問い続ける作家が、ひとりの読者に立ち返って選んだベスト・オブ・ベスト。島尾敏雄・ミホ、菊池寛、太宰治、坂口安吾、林芙美子、谷崎潤一郎ら、ともに生きながら哀しく行き違わざるを得ない生の現実を描いた11篇を収める。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

桐野 夏生
1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒業。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞受賞、99年『柔らかな頬』で第121回直木賞を受賞。2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞受賞。04年『OUT』が日本人としては初めてエドガー賞(MWA主催)の候補になる。同年『残虐記』で柴田錬三郎賞受賞。05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞受賞。08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 463ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2009/11/10)
  • ISBN-10: 416760213X
  • ISBN-13: 978-4167602130
  • 発売日: 2009/11/10
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.8 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
「我等、同じ船に乗り」と副題が示すように、
見事に作品の虜となってしまった。

数ある作品にコメントはできないが、一番衝撃を受けたものだけでも述べてみたい。

戦争の悲惨なことを述懐した作品は、胆を寒からしめる。
記憶はうそをつくはずであるから、誇大化する癖がある。
それでも、たとえば、吉村昭のような綿密な取材と独特の語り口で言われると、
昔の事実が今現実となる錯覚を覚えてしまう。

まして、体験者は年齢とともに、あのときの事実をどのように整理し、
人々に語ろうか、その熟成のときを待っているはずである。
それが堰を切ったように、口が開けば、私たちはその前に滂沱するしかない。

島尾ミホの作品「その夜」がそれである。

短編は一字一句、過分も不足もない著者そのものの魂だと思う。
受け止められるかそうでないかはそのときの体調にもよるし、
実際、こういった本は出会いだと思う。

島尾ミホには、おそらく本人だけにしか照射されていない時空があったと思う。
「隊長さま」一念、遠い距離の中、雷光を突き抜けるように疾走していく姿は劇的である。
これを愛といってしまうには、現代の社会では軽薄のようにすら感じる。
彼女がいとおしい。
純粋さが半端ではない。

戦争のお話になると、女性は大抵変わるものである。
このお話はまったくの一人の乙女の祈りであり、駆り立てる焦燥であり、疾走である。
こういう人は作品の中だけにしか見かけたことがないが、島尾ミホ本人が
その当の作品の人であり、こういうお話を持って語られると、やるせないというか、
なんとも、ひたすら純粋さに心打たれ、泣いてしまうのである。

男が泣くのはこういう女性ではないのかと考えてしまうほど、
彼女(「その夜」の本人)は強烈に光っている。
本を投げ捨てて、こういう人に会いに行きたくなってしまうのである。

著者本人の疾走と私の同じような気持ちが相まって、
どこまでもその気持ちの渦が消化できぬまま燃え尽きることもできない、
浮遊と成り果てる。

戦争は狂気も生むが、純粋さも増すのではないだろうか。
同じ船に乗るとは、正直つらいときもある。

その「隊長さま」の島尾敏雄の作品も収録されているのであるから、
まさにエンドレスの航海である。

江戸川乱歩の「芋虫」。
正直やりすぎの感もあるが、
見事な恐怖ではある。
しかし、怖いというのはどういう恐怖なのか?
それは作者がアタマで作ったのだから、船から降りればすむだろう。

本を閉じれば下船できる船もあるが、
錯覚を覚える作品もあり、侮りがたい。
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By かぼす VINE™ メンバー
形式:文庫
島尾敏雄「孤島夢」、島尾ミホ「その夜」、松本清張「菊枕」、林芙美子「骨」、江戸川乱歩「芋虫」、菊池寛「忠直卿行状記」、太宰治「水仙」、澁澤龍彦「ねむり姫」、坂口安吾「戦争と一人の女」「続戦争と一人の女」、谷崎潤一郎「鍵」、桐野さんが選んだ11編が入っています。

「その夜」:島尾ミホさんは初めて読みましたが大収穫です。奄美の島で特攻隊隊長と恋に落ちた主人公が、特攻前夜に命がけで彼に会いにいくという…。戦争による集団自決寸前の切迫感と恋の高揚とがあいまって、言いようのない「生々しさ」があります。こんな作家さんがいたこと、悲惨な戦争のさなかにこういう現実があったかもしれないことに、目が開かされました。

「芋虫」:乱歩が「極端な苦痛と快楽と惨劇とを書こうとした小説で、それだけである」と言っている小説。桐野さんは「最高の小説」と絶賛していますが同感です。エロくて悲しくて凄まじすぎる…。小説は文学は、こうでなくっちゃ!

「戦争と一人の女」「続戦争と一人の女」:この女、社会的にはドロップアウトしてるような人だけどすごくカッコいい! 空襲の中の刹那的な恋愛。過去も未来もなく、今ここだけという心理状態に、しびれます。

「鍵」:これも最高にエロい。夫婦でこんなにも互いを求めあっていることが倒錯的だし、娘とその恋人を巻き込んでの四角関係がおもしろすぎます。なんだか舌なめずりするような文体もたまりません。

「芋虫」や安吾は、若いころ初めて読んだときには頭がクラクラするような衝撃でした。
いま40代になって読んでも、何度読んでもやはり衝撃を受けます。

しかも桐野ファンとしては桐野さんの視線や感性に少し近づけたようで、二重に美味しい本でした。
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