アメリカの大学で日本文学の教授時代に万葉集の英訳で、全米図書賞を受賞したリービ英雄は、西洋出身者として初めての日本文学作家となった。かれは、自分の体験や思いを書く言葉として、日本語を選択した。日本語が日本人だけのものという日本人の思い込みを、万葉集の解説を通して正し、日本語の言語としての可能性を見出し、彼の考えを日本語で表現していく。その試みが「星条旗」以後、「万葉集」、「9・11」、「天安門」、「仮の水」などなど、多くの作品を生み出した。
『我的日本語』は、リービ英雄が、日本語とともに彼のたどってきた軌跡と作品の一つ一つがが、自分自身で、丁寧に解説してある。まるで、リービ教授による講義を聞いているようだ。私は今、この本をゆっくり、ゆっくり読んでいる。多分難解に思われる箇所は、それは知識の問題だけでなく、いろいろな世界からの目を日本語で表現しているから、戸惑ってしまうのかもしれない。その表現が、素晴らしい。日本人が英語が苦手、外国語が苦手というのは、語彙や文型を学ぶだけでなく、日本語、日本の歴史を、文学ををよく勉強し、把握し、いいたいことを異文化の人にどう内容を伝えるかの勉強というか、練習や配慮。その気付きと工夫が必要だからではないだろうか。読めば読むほど、味わい深い文章である。