たまたま、話題になった「福田君を殺して何になる」と書店の棚に並んでいたので、両方を手に取ってみた。取材力の差は歴然だ。「福田君〜」がすべてのエクスキューズを被告本人との面会に負わせている(しかも若い女性に一方的な好意を抱きがちな性向らしい被告がどこまで本心を語っているのか分からない)のに対し、本書は被告本人には会っていないにもかかわらず、孤独で人の温かさに飢えた男の短い一生を緻密な取材で巧みに浮かび上がらせている。もちろん、「福田君〜」に価値がないなどと言うつもりはない。被告の肉声を世に伝えたという点で意味があるのだろうが、いかんせん、世間の注目を浴びた事件で少年の実名を報じたという点で必要以上に脚光を浴び、意図したかどうかは分からないが、筆力以上にもてはやされた面はあるだろう。世間では光市の事件ほどには注目されなかった姉妹殺人事件にこだわり、ほとんど報じられることなく独りこの世から去っていった男の内心を浮かび上がらせた熱意と労力に敬意を表したい。