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我が心は石にあらず―高橋和巳コレクション〈8〉 (河出文庫)
 
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我が心は石にあらず―高橋和巳コレクション〈8〉 (河出文庫) [文庫]

高橋 和巳 , 川西 政明 , 埴谷 雄高
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

会社のエリートとして、組合のリーダーとして、また家庭人として、日々を真摯に生きる“私”がめぐりあった愛。一方、時代は高度成長期に入り、組合と経営の関係は緊迫して行く…。戦後という変化の時代を背景に、愛を凝視し、志の可能性を深く問いつめた高橋文学の金字塔。

登録情報

  • 文庫: 390ページ
  • 出版社: 河出書房新社 (1996/12)
  • ISBN-10: 4309420095
  • ISBN-13: 978-4309420097
  • 発売日: 1996/12
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 669,593位 (本のベストセラーを見る)
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By クレオ・シュライベン トップ1000レビュアー
形式:文庫
高橋和巳は、絶頂期に鎌倉で胃がんでなくなったのですが,奥さまが追悼の文章を書いていて悲しみであふれています。その文章のなかにこの作品への言及もあります。わたしは,この著作は,父親の本棚からこっそり取り出して,がっくりしていた浪人時代に読みました。もう浪人はだめだぞ勉強しろよとかやかましくいわれていたのに,予備校でこれをこそこそ読んでいました。通信添削でよく名前をみていたK君も同じ年に理3に合格したので本郷で初対面で待ち合わせて話をしたときK君も高橋和巳を読んでいたので驚いたことを思い出します。高橋和巳は大阪の小さな町工場の家にうまれて(つまりプロレタリアート)、吉川幸次郎のもとで中国文学を学んで、たしか中国にも渡航しているはずで,それらしい書き物が河出の大きい黄土色の全集のほうに入っています。硬質というかぎこちない文章で,ちょうどドイツ写実派の絵のように実に細部まで書こうとするので兆大な文字数になり,だから,一般受けするとはとてもおもえません。ただし一字一句を吟味していくとまったく手抜きのない文章で,全体として壮大な物語を構築する様子がわかるはずです。完全な解剖学の教科書のようなものともいえます。

高橋和巳はルーズな男女関係を一方で蔑視しながらも同時に環境というか上部構造と下部構造のギャップ(閑話休題―偉そうに書いていますがほんとはよくわかっていません)というか,第三者的桎梏の合間に見え隠れする価値基準といいうか,そういう次元の切れ目から生じる軋轢のようなものというか,そういうものを描こうとしていると思います。男女の交わり(性器接合)をはっきり認定して進みます。やつらはできていたのかなみたいには書かない作家で,こういうところは私のような実験データをまず持ってきて考えるタイプには合っているし,こんなにはっきり人間関係を断定的に設定して書いていく作家は珍しいのではないでしょうか。陰翳礼讃的なあいまいさはまったくなしにしようとした文体といえるのでは?大岡昇平はあれほど写実的に書くのに男女関係だけはその場を書かないですよね。これらは伊藤整の海鳴仙吉や石川達三の青春の蹉跌でもはっきり表れている筆者と同じ世代の日本の若者の表象心裡ではなかったのかと思われますが,わたしは読書範囲も限られた理系人間ですのであまりはっきりとはいえません。なおマルクス主義および当時の毛沢東思想などの影響との関係についてもいろんなことが書かれていますが,正直いって,作品だけからはあまり関係ないかなと思います。たしかに主人公は資本論的な用語を使っていたり,労働者なのに相当なインテリでしかも大変な知識をもっていますが,これは作者の意図的な創作ですし,造反有理というのもよくわかりませんし。

私自身は,本書の描く組合内部の力学のようなものはもうひとつわからないままに読んでいます。そうなのかなあという感じだけです。巻末の評者によれば,階級闘争というのかな,高橋和巳の町工場出身という「出自」が影響しているとのことですが,文学というのはそういうものなのかな?という感じです。わたしの所属する組織は,経営の観点からも最先端の診療と研究の観点からも,できる限り単純化したものになっていますし,ある意味では才能勝負という側面が強いし,この小説のように,地位の高い男の娘だから彼女が優遇されるというわけでもないし,望むなら外国でポストも得ることができます。

素人ですが,この小説は,日常の作為的構造体のようなものから大きく飛翔しているのではないでしょうか。救いのない結末のようにみえて実は大きな空間で自己を生かすのはこうだと語っているのでは?だからこそ,ごく普通の体験しかないわたしたちもそれなりの解釈で読んでいいのではないでしょうか?

「白く塗りたる墓」もお勧めします。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By daepodong VINE™ メンバー
形式:文庫
 わたくしは高橋文学のファンだから、ちょっと四つ星はアマイ評価かもしれない。高橋和巳は自ら自分の文学を「インテリゲンチャの苦渋を描いたもの」と定義しているが、その点からすると本作品はまさにそれを正面から描いたものであろう。舞台はマルクス主義的な労働組合と会社との対決である。主人公はその会社の寄付で設立された奨学金で大学を卒業し、地域に貢献する人材たることを義務づけられている。しかし、組合活動に拘っていくうちに、内部からその組合は崩壊し、「インテリゲンチャの苦渋」を共有できる女性と不倫関係に陥って妊娠させてしまうが、失脚し故地を離れざるを得なくなり、恋人との関係も崩壊する、という筋である。
 かたちの上では主人公は「人生に敗北した」ことになる。社会的には失墜し、巻き込んだ恋人を放棄しているのだから。しかし、妻や子供との関係は崩壊していない。妻は不倫の事実に気付いているかもしれないが、少なくとも夫(主人公)との関係の中では知らぬ存ぜぬを続けているのだから。すると、中国文学、特に李商隠に代表される後期唐詩や陶淵明などの六朝文学の研究者であった高橋の意図は、「国破れて山河あり」にあったのかもしれない。つまり、「観念」は破れても、人間生活の基盤たる「家庭」はある意味無傷で保存されたのである。ある意味なんと残酷な結末であろうか。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
本作品は、中途までは、該博な教養、知識、つまり彼の本業は中国文学なのだが、経済や労働運動、工学への薀蓄が深く描写されていて、それに比較してドラマとしての進展が少々退屈気味であった。その長い滑走を経て、いったん飛び立ったと思ったら、結末に向かってグイグイ上昇していった。労働争議も、男女の関係も、この先どうなっていくのだろうとハラハラして、読むのが止められなくなってしまった。

研究所員で、労働者組織のリーダーである主人公信藤誠は、理性的でそう過激ではない。その人徳と保守ではないが既成左翼にも組していない思想によって労働者の広範な支持を得ていた。そんな彼を破滅させたのは、読者の予想を裏切って不倫問題によってではない。組織の裏切りによる争議の背後からの撹乱に敗北したのだ。

いつの時代にも分裂分子、スパイといったものがいるが、それをテーマにしたがゆえに、60年代70年代の高揚した反体制運動に共鳴した人々の興味ある作品となったのだと思う。
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