内容紹介
財団法人ヒューマンサイエンス振興財団は、創立20周年記念事業の一環として平成17年から平成18年にかけて「20年後の保健医療の将来動向調査II」を実施した。これは、ゲノム科学、再生医療、創薬技術などの最先端の生命科学分野、がん・感染症・免疫・精神神経・循環器・代謝などのさまざまな疾病領域、あるいは医療機器・医療制度・環境分野の将来像、更には患者や市場動向に関する幅広い専門家の意見をデルファイ法を用いてまとめ、今後の技術発展の方向性や進捗、社会環境の変化などを分析した調査である。保健医療の分野でこのような大規模な調査が行われるのは、20年前に同財団が実施して以来のことであり、今回の調査結果と比較して顧みることも大変興味ある点である。
本書は、これらの調査報告書を基に、集計結果の各種解析、20年前の調査結果の検証・分析を織り交ぜて一般向けの書籍として新たに纏め上げたものである。本調査では、今後の保健医療において重要と思われる152課題を選定し、デルファイ法による専門家アンケート調査を行い、集計結果をまとめた。課題ごとに、課題の重要度、実現によるインパクト、実現時期、実現を妨げている制約、それらの具体的内容、回答の理由などを調査した。重要度上位70課題の分野別分布状況は、精神・神経10、がん9、医療機器・材料9、循環器8、再生医療6、感染症5課題などとなった。
取り上げられた課題のうち、重要度1位は「アルツハイマー病に対し、症状の進行阻止または改善可能な治療法が開発される」、2位は「がんの生物学的特性が解明される」、3位は「アルツハイマー病の発症メカニズムの全貌が解明される」、4位は「幹細胞から必要に応じて組織を再生し、疾患の治療に用いる技術が実用化される」であった。
この本の優れた特長は、単なる調査報告書ということだけではなく、がん、呼吸器系疾患、アルツハイマー病、医療機器、再生医療、創薬などの将来展望について、各分野の専門家による書き下ろし原稿を掲載したところである。また、アンケート調査結果に基づき、ビジュアルなイメージ図として、予防医療、診断法、再生医療、治療機器・人工臓器・医用材料、疾患治療法、個の医療等の20年後の姿を描き、一般の方々にも理解しやすいように工夫していることも優れた点として挙げられる。さらには、充実した索引のほか、付録CD-ROMには集計データ、各種集計ランキングデータ等が収録されており、購読者が独自に各種解析ができるよう配慮されていることも付記したい点である。本書が、我が国の保健医療に携わっておられる多くの医療従事者をはじめ、一般の方々も含めて国民の生活に深く関係する保健医療の将来について一緒に考えるための契機に資することは間違いないものと考えられる。また、保健医療分野に関与する企業・団体にとって将来の事業展開を図る上では随一といって良いほど貴重な資料であり、是非そのような観点からも本書を参照されることをお奨めしたい。