この著者の本を読むのは今回が初めてでした。
そのせいもあるかもしれませんが、個人的に、☆7個くらい付けても良いと思える傑作だと思えました。
経済学的に自然な流れで論が進んでいきますが、著者が与える示唆が非常に目新しく、説得力に溢れています。
最大のポイントは、「新古典派」「ケインズ派」の双方に懐疑的で、かといって「第三の道」でもなく、
「成熟社会における不況は構造的なものであり、国内の有効需要不足とデフレスパイラルを解消しない限り、解決しない」
というシンプルな持論をわかりやすく展開している点にあります。
筆者の主な主張を抜き出すと、以下のようになります。
●そもそも、発展途上の社会と、成熟した社会とは、消費・投資を含めた内需の積極度がまったく異なる。
●成熟した社会では、人々の物欲の伸び白は小さいので、内需の喚起が難しくなる。結果、構造不況になりやすい。
●構造不況化で、ケインズ的な景気政策(すなわち「バラまき」)を行うだけでは、内需は伸びない。乗数効果も薄い。
●構造不況化では、貨幣の「予備的動機」による保有が支配的になる。(筆者はこれを、物を買うアテもないのに金だけを溜め込む「守銭奴的拝金主義」と述べています)
●構造不況化では、人々は一定の生活水準の下でお金を溜め込んでいるので、一層生活の満足度を向上させるイノベーティブな分野が活性化することが望ましく、ここを雇用創出の基点とすべきである。
●消費税をはじめとした税は徴収部分にのみフォーカスが当たりやすいが、税財源を使ってイノベーティブな分野に重点的に再分配すれば、国全体として不況をマイルドにできる。
●逆に公的機関の歳出削減を行えば、その分、どこかで失業者が生み出されることになるので、歳出削減は国全体としてはあまり意味が無い。
●外需が増えても、経常黒字が続く限り円高圧力がかかるので、外需のみで国内不況を打破することはできない。
私は今まで、不況、円高、デフレ、失業、等々、現在の日本が抱える構造的な経済問題について、様々な書籍を読み漁ってきたつもりですが、本書のような主張を見るのは初めてで、
自分が各書籍を読む中で感じていた違和感(例えば、インフレターゲット論一辺倒の本に対する「本当に金融緩和だけでデフレ不況は解決するのか?もっと根は深いのではないか?」といった漠然とした物足りなさ)を埋めてくれるものでした。
経済学的には非常に簡単な理論やデータしか使わずに話が進むので、一般書としても抵抗無く読めると思われます。
この方の論調が100%、正しい訳ではないかもしれませんが、経済学には諸説ある中でどれが現実をより反映しているかを見比べることが肝要なので、日本の今後の経済政策を考える上で、大変参考になりました。