ワッサースタインの名著「Big Deal」の3章の和訳。以前は「ビックディール」上・下として出ていたものの、原著が改訂された(といっても5年前だが)のに伴う新訳である。原著は第1章がM&Aの歴史を概観し、第2章が業種毎にM&Aがどのような戦略的意図でなされてきたのかを詳細に検討し、第3章がM&A実行に当たってのテクニカルな側面を解説するという章立てであった。
本書は第3章の訳としては悪くないが、なぜ1・2章が訳されていないのかが非常に悔やまれる。なぜなら原著が他の数多くのM&A本と際だって優れていたのは、M&Aがどのような戦略的意図に基づいてなされてきたのかを丁寧に解説した2章にあったからだ。もちろん第2章は2000年時点での記述のため、すでに古くなっていることは否めないが、それでもそれを熟読すれば今日本で新たにおこっているように見えることも、実はアメリカでかつておこったことであることがわかり、今後日本でもどのようなことがおこるのかについて重要な示唆を与えられる。是非近い将来の完訳を望みたい。