戊辰戦争という名の本を読むのは、本書冒頭でも紹
介されている原口清のもの(1963)以来です。原口のも
のは、いわゆる継起的な発展段階説でこの戦争を評価
したもので、当時のわたしには、とても新鮮に見えたも
のです。
それに比して本書は、いかにも「戦争の日本史」の一
巻らしく坦々とした戦史であり、原口のもののような妙
味には欠けます。例えば、つい様々な思い入れをしてし
まう(最近の創作では、泡坂妻夫『飛奴』が秀逸)上野
戦争などは、2頁で終わってしまっています。しかし、次
のような結語は、坦々とした戦史の末のものだからこそ、
読者を考え込ませる重みがありました。
戊辰戦争は結局のところ、大名軍役の動員基準とし
て施条鉄砲(ライフル)段階の洋式軍制を位置づけたと
ころに最大の意義があった。(中略)王政復古の名の
下に、新政府の軍事的ヘゲモニーを掌握した薩長の軍
事改革派は、この大変革を一気にやりおおせたのであ
る。
他に、「戦争の社会史」たる「ヒト・モノ・カネ」の、とり
わけ兵器や軍事物資の輸送の実態の記述が、興味深
かったです。