本書は,参議院憲法調査会事務局で調査スタッフとして,主に憲法9条関係を担当して
きた筆者が,「憲法9条についての基本的な知識を,可能な限り詳細かつ正確に摘示し,
また理解しやすいように整理して提供しようとしたものである」。
本書の対象とする読者は,「専門家やオピニオン・リーダーも含めてより多くの国民」
だとしている。
本書の記述は,確かに論理的かつ整理されているから,丁寧に読めば必ず中身を理解
できるものではある。しかし,法律学を学んだ経験がない者にとっては,その記述の
作法には親しみがなく,抵抗を感じるかもしれない。要するに,本書は「分厚い法律書」
なのである。
その意味で,本書は,巷に出回る憲法9条関連本とは一線を画する敷居の高いもので
あって,筆者の想定に反して,もっぱら専門家やオピニオン・リーダー向けの本に
なってしまっているといえなくもない。
本書の中身について述べると,本書は,集団的自衛権を含め「自衛権」関連を詳細に
扱っているという特徴がある他,国連による集団安全保障,我が国の防衛法制,さらには
国家緊急権,国際法と9条との関係など,その視点の幅が広く,まさに「痒い所に手が届く」
感じである。憲法9条に関してわからなくなったら,本書をみるというように辞書的に
使うことも期待できる。というよりは,そういう使い方をする読者が多いのではないか
と思う。例えば,巷にあふれる9条本の中身が怪しいと思ったら,まずは本書にあたって
中身をチェックするなどの使い方が考えられる。
以上,本書は,専門性が高く,敷居が高い一冊ではあるものの,その記述は圧倒的に詳細
であって,信頼性もまた高いから,憲法9条改正問題について興味のある読者においては,
そのお手元に一冊おいておいて損はないと思う。