憲法学の本としては論理性に優れると思います。憲法の学説は、総論に顕著ですが、背景となる哲学的思想の変遷や歴史的な史実を知らずして理解が困難という性格を持っています。その観点から理想的な学問のアプローチ方法としては、たとえば佐藤憲法学や伊藤憲法学のように碩学が詳細に述べられておられる原典にあたりつつ、理解を深めるというのが正しいのでしょうが、学者を目指すのでもなく、あまり時間をかけずに憲法の概要が知りたい向きにはそういう方法は採れません。その観点からすると、浦部先生は非常に論理的という点でお勧めです。芦部先生などとは異なり、前提をおかなくても、論理だけで切っていくので、背景思想や事実を知らなくても、一緒に考えていくだけで憲法の基本問題が頭に入ってくるという明瞭な効果があります。通説とは異なるという意味では、我妻説に対する内田民法学みたいに、法学ジャーナリズムの一つと捉えて読んでいても、とても面白いですし、明快です。その意味で、記述や学説自体の曖昧さを批判される芦部説や佐藤説とは異なり、論理的思考が好きな理系人種にもとてもお勧めできます。何か一冊を、と聞かれたらこれが一番だとお答えしたいと思います。