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憂い顔の童子 (講談社文庫)
 
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憂い顔の童子 (講談社文庫) [文庫]

大江 健三郎 , リービ 英雄
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

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   センダックの絵本を下敷きに、大江健三郎の義兄である伊丹十三の自殺を扱った『取り替え子』の続編である。

   国際的な作家の長江古義人(こぎと)は母の死後に故郷の森へ移り住むことを決意する。同行者は知的障害者の息子であるアカリと、10年も前から古義人の小説を研究しているアメリカ人女性ローズ。妻の千樫は自殺した兄、吾良(ごろう)の女友達を助けるためベルリンに滞在中だ。

   故郷に戻った古義人はしばしば引用される『ドン・キホーテ』の主人公のように喜劇的な冒険者として描かれる。吾良の自殺を中心に魂の再生を描いた迫力のこもった前作に比べれば、1960年代の政治活動のパロディをするなど、本書はノスタルジックな色合いが強いといえる。その理由は、本書のなかで大江自身がモデルと思われる古義人が言っているように「自分が作り出した作品世界において根本的な主題系を(中略)あらためて検証しようとしている」からにほかならない。そして、検証の中心になるのが土地の伝承に出てくる「童子」だ。つねに少年として森の奥に生きる童子は、この土地を危機が見舞う際、時を越えて出現し人々を救う。古義人は幼い頃、童子に置き去りにされたという心の傷を抱えてずっと生きてきたのだ。

   狂言回しの役割を担うローズの客観的な批評も盛り込み、みずからの軌跡や土地の伝承をつまびらかに検証する本書は、戦後50年の日本社会の再検討のみならず、200年に及ぶ日本の近代化の歴史を周縁から問いなおす大江文学の集大成である。同時に、最も重要な主題にあらためて向き合い、新たな地平を切りひらく野心作といえるだろう。(齋藤聡海) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

出版社/著者からの内容紹介

小説家、「ドン・キホーテ」と森へ帰る。
滑稽かつ悲惨な老年の冒険をつうじて、死んだ母親と去った友人の「真実」に辿りつくまで。

魂に真の和解はあるのか?
書下ろし長篇小説

「森に入って、ある1本の木を選んで、ちょうどいまの年齢の、老年の私が待っている。その私に、子供の私が会いに来るんだ。
しかし老人はね、少年に対して、きみが夢みるほど高い達成はない、この自分が、つまりきみの50年後なんだから、とはいわない。それが「自分の木」のルールだから……」
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 616ページ
  • 出版社: 講談社 (2005/11/15)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062752565
  • ISBN-13: 978-4062752565
  • 発売日: 2005/11/15
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 384,770位 (本のベストセラーを見る)
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16 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 40年を超えた大江の作家人生。彼の小説は「初期の作品の方がよい」との評価も多いが、それを覆す傑作。作家人生、または人生そのものを魂をこめて振り返っており、作者は「最後の小説」を模索しているようだ。

 「ドンキ・ホーテ」を手に小説家は東京から故郷へ帰る。彼は自殺した義兄の映画監督との思い出を振り返り、彼は人生のけじめをつけたのだと主張する。作品の最後に小説家と映画監督にとって衝撃的な事件がそれぞれの創作の原点として存在することを明かす。これは大変ショッキングなものである。

 私小説のようであり、フィクションもある「大江調」ともいえるスタイル。もちろん大江はかねてから「すべての小説はフィクションである」と主張しており、すべてが現実の話ではない。しかし、現代純文学にベテラン健在をアピールしている。

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形式:文庫
取り替え子に続く、魂の物語。
主人公の長江と、長男のアカリ、作家である長江の文学研究者のローズさんが、長江の故郷の森に帰るところから始まる物語は、読者を精神の深い森へと誘ってゆく。
登場人物達に誘われるまま読み進んでいくと、現実とドン・キホーテの世界とを行きつ戻りつする不思議な時空が立ち現れる。
空想と現世の境が次第にぼやけてゆくような感覚。
幾重にも入れ子になったような複雑で深い物語世界に、いつのまにか引きずり込まれてしまった。
まるで懐の深い森を探索したあとのような、読後の痺れるほどの満足感は、この著者ならではのもので、ほかではなかなか得られないと思う。
このレビューは参考になりましたか?
30 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
持続する志 2002/10/25
形式:単行本
 「海辺のカフカ」の口直しといっては失礼だが、絶妙のタイミングで出版され、正に「干天の慈雨」。

 例によって、「私小説」と見まごう体裁ではあるが、柳美里のように旧態依然且つ能天気な「不幸自慢」の対極にあり、「メタ小説」とも言うべき精緻な構造の深化はさすがである。

 その「仕掛け」を十分に楽しむためには、誤解を恐れずに言えば、ある程度の「教養」のみならず、持続的に大江作品を読む経験をも求められるのは致し方ないところであろう。

 それでも、その結果得られる確とした読書の喜びは、掛替えのないものであって、期待に反して編集者不在を象徴するようなファンクラブ向け作品を読ませられる落胆とは比ぶべくもない。

 今や、真面目は嘲笑の対象でしかないが、それでもなお前進を続ける大江健三郎から目を離すことは出来ない。

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