「今度、丹下段平やるんですよね?」
NHK大河ドラマ『
龍馬伝』の撮影中に主役の福山雅治から香川に発した一言から幕を開ける本書は、映画『
あしたのジョー』(2011・2・11公開、監督:曽利文彦、主演:山下智久)において主役の矢吹丈(演:山下智久)の師匠である
丹下段平を演じる香川氏の視点から描かれた本作における舞台裏が語られた内容となっている。
オフィシャルガイドブックや
雑誌の特集記事などで撮影の舞台裏をライターによって紹介された内容は何度も見られたが、本作品の主役以外の一出演者が公開作品の舞台裏の全てを語る事自体極めて稀なケースであるが、本書ではキャスティングを受けてからクランクイン〜クランプアップまでの日々を香川氏自ら語る本当の意味での撮影秘話が満載であり、また冒頭にも述べたように香川氏の語り口が面白く、本作品に関心の薄い方にも大変楽しめる内容となっている。
私自身、ジョーの大ファンであり、今回の実写映画化に驚いたが、丹下段平役を香川氏に配役された事に「ジャニーズ・ジョーと東大出の丹下段平では(原作の)イメージが合わないな」と思っていたが香川氏が30年以上に渡る大のボクシングファンで精通しており、今でも頭の中では芝居よりもボクシングの事が占めているという(香川氏曰く、一日15時間以上はボクシングの事ばかり考えている)事を知り、まさに香川氏こそ“拳キチ段平”に相応しいと思った。
事実撮影中もボクシングトレーナー兼監修である梅津正彦氏(過去に北野武監督作品『
キッズ・リターン』を担当しており、本作では力石のトレーナー役で出演)と現場では二人にしか分からない専門用語の応酬や出番のない休日にも撮影所に現われてボクシング指導を行ない、時には監督を差し置いてボクシングシーンのリテイクを要求するなど自身の領分を越えての熱の入れように圧倒されるばかりである。
ただ、本書の中で告白している通り、当時ボクシングには心酔していてもジョーに傾倒していたワケではなかった(理由は本書にある) 香川氏だが、後年原作を読み直して『
あしたのジョー』という作品が放つメッセージの素晴らしさを再認識して今回の出演に一人だけ原作に近いリアル段平の風貌に見ている私も「この作品、大丈夫か?」と思ったが香川氏の演技に魅入られているうちに違和感がなくなり、原作にもある“あした”を語る段平のせりふには正直感動しました。