正直、評価が非常に難しい。
「慢性うつ病は必ず治る」という蜜の味のする言葉は言明としては誤りだと評者は考えているが、一方で、臨床でクライアントに「必ず治ります(良くなります)」ということで、それこそ自殺の危機から救えることもあるからである。従って、本書は誰にでも推奨できる本ではなく、特に強度の抑うつで苦しんでいる人は読まない方がいい。本書の内容に対する自分の反例を挙げ、結果、より絶望してしまいかねない。主な読者層としては、比較的症状が軽い患者およびその家族か?
■著者の主張を要約する。
8割くらいは、カウンセリングを治療と併用することでよくなる。残り2割が改善しないのは、自分の性格と行動を変えようとする意志が弱い。人は、追い詰められれば変わるもの("
3週間続ければ一生が変わる"より)。ダメな自分を受け入れる(自分はダメだと諦めるのでもなく、完全な自分を求めるのでもなく、今の自分でいいという自信を持つ)ことが重要。
■現時点でのうつ病に対する評者の考えを述べる。
『
鬱の力』ではないが、うつは「治す」ものではなく、コントロールするもの。
つまり、花粉症やアトピーといったアレルギー体質のようなもので、身体というコップ/ダムがストレスという水で一度溢れると、溢れる前の自分には戻れない(その意味では、「一生、治らない」)。刺激→ストレス、アレルギー反応→抑うつ、と対応する。勿論、“体質改善”による再発防止で実質的な“根治”に近づけることはできるが、自分を刺激(ストレス)の強い環境に置かないという”コップ/ダムの監視”が常に必要。それは、コップ/ダムの存在すら認識しなかった以前の本人とは、明らかに異なる。
ビジネスは基本、競争社会。本書でいうような「人と協調する生き方」に変え、新しい居場所を見つけることは誰にでも望めることではない。仕事や家庭などの(外部)環境は、変えられないことの方が多いだろう。
うつ病に関する書籍は山ほどあるが、“慢性”うつ病に焦点を当てた本は少ない。議論の出発点にはなると評価する。
山口修司(精神保健福祉士)