世界中で何千万人も死ぬような災害は感染症しかないだろう。前半でどれだけ感染症が西欧をパニックに陥れてきたか、中世から近世にかけての感染症の猖獗が引き起こしたパニックを、中盤では公衆衛生の確立と下層市民の不健康な生活を、最後にインフルエンザの脅威を記した。
梅毒がはやり出した頃、各国で梅毒に「フランス病」などといったように敵国の名前を付けたとか、結核患者に王様が触れると結核が治るという俗信があった、など今は余り知られていない、各時代の奇妙な因習や、感染症が招く狂気を色々紹介していて面白い。各章で教会が話題に上り、改めて西欧史における教会の影響力の大きさを感じさせる。
最後に鳥インフルエンザのことを書いている。なぜそんなに恐れられているのか分からなかったが、本書を読みその疑問が氷解した。今は鳥から人だけで人から人への感染はしないが、ウイルスは確実に人から人へ感染しそうなものに変化しつつあるそうだ。しかも致死率は50%以上あり、伝染力がすさまじい。インフルエンザの威力はすさまじく、第一次大戦もインフルエンザのせいで終わったというほどだ。
とにかく、どの章も面白い。各時代を代表する病気を一つづつ取り上げているが、最初にその病気についての解説も分かりやすい。感染症がどれだけ人を悩ませ続けているか、感染症自体の恐怖はもちろん、感染症の生む狂気の怖さも思わずにはいられない。