人類の長い歴史をたどりながら、感染症と文明との深い関わりを説き明かしてくれる本。
フェロー諸島やフィジー、グリーンランドといった島国での麻疹の大流行による大量死、新大陸での数々の感染症によるアステカやインカの崩壊というような孤立した文明に持ち込まれた感染症の恐怖がある一方で、
メソポタミア、黄河、インダスそれぞれの文明は多くの感染症とともに存在した。逆に感染症が文明を守ってきたという。
その後の中世のシルクロード交易をきっかけとしたペストの大流行。マラリアや黄熱病の蔓延する暗黒大陸アフリカへの困難を極めた進出。
そして、ペニシリンの発見とワクチンの開発による輝かしい時代。
それでも、エイズやSAAS、新型インフルエンザなどいまだに発生する新しい感染症。
以上の歴史から、著者はこう結論づける。
病原体の根絶は、行き過ぎた適応ではないか。
むしろ大惨事を保全するためには、「共生」の考え方が必要になる。
そのためには、「共生」のためのコストが必要になる。
すなわち、現代文明は自然(感染症を含む)を克服し、快適なものするように進んできたが、今その自然からしっぺ返しを受けつつある。
長い人類の歴史から学ぶのは、克服ではなく「共生」である。
多くの地震や津波対策が施されていたにもかかわらず、空前の犠牲者を出した東日本大震災を前に、著者の言葉は重く響く。