2000年に開催されたショパン・コンクールで18歳の若さで優勝した中国・重慶出身のピアニスト、ユンディ・リによる、2010年5月に北京で催されたコンサートの模様を収録したCD+DVDのセットアルバム。私は廉価な輸入盤を購入したのだが、国内盤は若干仕様が異なっている。
まず輸入盤では1枚のみだったCDがこの国内盤では2枚となっている。このため、輸入盤では割愛されていた夜想曲第8番と第13番の2曲が、DVDだけでなくCDにも収録されている。次いでCDの収録曲順であるが、国内盤ではDVDと同様に実際のコンサートの順番に収録されている。(輸入盤はなぜか収録順が入れ替えられている)。
購入する人は以上の相違点と価格を踏まえて(国内盤or輸入盤)を選択してほしい。ちなみにアンコールで弾かれている「彩雲追月」という作品は王健中の作品を仁光なる人物がピアノ曲にアレンジしたもの。
以下の感想は輸入盤のレビューと重複するが、あらためて転載させていただく。
このコンサートのために選ばれた曲たちは外面的な演奏効果の高い曲が多く、首都での華やかなライヴに相応しいラインナップである。コンサートの模様が如実に伝わるのはやはりDVDで、ほぼ満員の聴衆を向かえ、冒頭の夜想曲第1番から情熱的なカンタービレを聴かせてくれる。・・・そう、このライヴの演奏は本当に情熱的だ。ユンディ・リは、最近EMIからセッション録音による夜想曲の全集をリリースしていて、禁欲と歌の高度なバランスにたいへん感心したものだが、このライヴははるかに情感の振幅を大きく取っている。取りうるテンポの幅も広く、味付けもやや濃い目だ。熱狂的な故郷の聴衆を前にして、少し全体の雰囲気にのめる様なところがあったのだろう。だが、絶妙のバランス感覚が保たれていて、音楽の流麗な起伏は綻(ほころ)びがなく、聴いていて気持ちが良い。夜想曲から「5曲だけ」抜粋したのが良い方向に作用している。
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズは、少し早めのテンポで、刹那的な加速やたたみかけ、エネルギーの放散があり、これまた気持ちよい。卓越した技術がこの様な表現を可能としているのだろう。ソナタ第2番も特に第1楽章と第2楽章の叩き付ける様な迫力が凄い。聴衆を酔わせる演奏だ。
ポロネーズの第6番も技巧の鮮やかな切れ味が堪能できる。特にオクターヴ連打のシーンであっても、詩情を感じさせるレガートの味わいは、この曲のみならずショパンを聴く大きな醍醐味だ。奔放のようでいて、コントロールされた打鍵は、音楽的な意図を十分に踏まえていると感じられ、これもショパンの音楽を良く響かせる。マズルカ第23番の典雅さと第22番の寂寞とした悲しい情緒の対比に、豊かさを感じるのも、そのような特性からもたらされるのだと思う。
いずれにしても、現代、ショパンを安心して託せるピアニストのライヴの模様が、CD,DVD双方で楽しめるこのアルバムは、高い価値を有しているに違いない。