熱い。お客様のためにとか、応援してくれる人のために、とか実用的動機が幅を利かす今日この頃、「何の役にも立たないこと」に感動できる素晴らしさをこれほど率直に語ってくれる本は貴重だ。既に数学の感動を知っている人にはよく知られた話題が多いのは当然だが、著者独自の見解もあり、数学好きの私にも幾ばくかの新発見はあった。まだこの感動を知らない人はぜひ手にとってみてほしい。
ただ3章以降には非常に高度な話題もあり、この本の短い紹介を読んだだけではさっぱり理解ができないか、かえって誤解するような部分もあるので注意願いたい。ここは「よくわからないが、なんだかものすごく素晴らしい世界があるみたいだ」ということが読みとれれば良く、素晴らしい世界については他の書を参考にするのがよいでしょう。
ちょっとした難点が2つ。p196の「相対性理論」の説明は完全な間違い。相対性理論は数学基礎論とも量子論とも独立したものである。中学時代に感動した著者が、なぜこのようなミスをしたのか不可解。またp128の「負×負=正は具体例では説明できない」も間違い。いくらでも具体例はある。例えば「数学ぎらいはなぜ多い―さんすう教育と量」(ISBN-13: 978-4795248373)第5章にはカードの負得点札の例がある。ポイントは異なる量同士の計算だということだ。
抽象世界に熱くなるのは白ける、地に足が着いていないと理解できない、という人には、畑村洋太郎「直観でわかる数学」や、「数学 こんな授業を受けたかった」(ISBN-13: 978-4534043184)がお勧めである。