実在のピアニスト、エディ・デューチンの波瀾万丈な生涯を綴った壮大な叙情詩。とにかく驚かされるのが、主演のタイロン・パワーのピアノ演奏シーン。普通なら実際に演奏しているようには撮影しないものだが、むしろ直接ピアノの上で手が魔術師のように動く様が素晴らしい。実際は、カーメン・キャバレロという名ピアニストが当時のエディのように弾いた演奏にタイロン・パワーがなぞっているだけなのだが、ピアノを弾く人間も彼が実際に弾いているとしか思えないほど、きちんとした演技(ていうか、実際の音はどうでもタイロンの凄まじい練習と努力がこの映画の素晴らしさを更に盛り上げているのは間違いないのだ)そして、キム・ノヴァクも素晴らしい。ヒッチコックの「めまい」でしか彼女を知らなかった自分はこの映画での彼女の存在感にさらに驚愕をおぼえたほどだ。とにかく、50年代の映画には今の映画にない美学が存在する。ピアノの演奏シーンはどれも素晴らしいが、一番の見どころは、戦場にあった壊れかけのピアノで現地の子供と連弾する場面。お馴染みの遊び曲から始まり、最後はリストのハンガリー狂詩曲のフレーズを本当に楽しそうに演奏している。そして、それをきっかけに本当の家族愛を彼は見つけるのだった。このシーンだけチャプターで繰り返し見ると本当に元気になってしまう。ピアノがこんなに楽しいなんて今まで知らなかった!と思わせるだけの映画なのだ。