著者は70年代初頭に右翼団体「一水会」を立ち上げた、その世界の大立者。
今年は特に教育基本法の改正論議で「愛国心」を盛り込むか否かが盛んに語られましたが、そうした時期にあってタイムリーな出版物といえるでしょう。
全体的に至極全うな内容だというのが、率直な読後感です。
国家運営のひとつの装置として天皇が前面に押し出されるようになったきっかけが西郷どんの西南戦争だったというくだりは頷きながら読みました。不平士族をまとめあげていった西郷が持つカリスマ性に立ち向かうため、明治政府が天皇というカリスマを担ぎ上げたというのです。
さらには、愛国心とは人民の権利を守るという思想のもとに始まったはずのものが、国家に乗っ取られ、やがて利用されていったという歴史的変遷にも触れていますが、これもまた大変興味深く読みました。
最後に著者は綴ります。
愛国心とは声高に叫ぶものではなく、「国民一人一人が、心の中に持っていればいい。口に出して言ったら嘘になる。また他人を批判するときの道具になるし、凶器になりやすい。だから、胸の中に秘めておくか、どうしても言う必要がある時は、小声でそっと言ったらいい」と。
右翼の大物というプロフィールをもつ著者からは、偏狭で教条主義的な論理が展開されるのではないかとおそれていたのですが、そんな私の想像をあざ笑うかのような内容に驚かされました。
と同時に、この著者にこうした内容の書を執筆させるという出版社の編集センスにも注目したいと思います。