三部作がこの本で完結しましたが、全体を通して愛憎と恋愛を中心にとても読み手のツボをついたお話だったと思います。
こういう長編になると、話の視点が仕事だったり事件だったりということにずれて行きがちですが、このストーリーは恋愛が始終メインにおかれているのもよかったです。
お互いが実は恨む側と恨まれる側だということがわかった上で、愛人関係となった智之と一成。
お互いに本当は好きなのに、一成は過去の事実がその感情をさえぎり、智之はそんな一成でも好きだから彼のいうとおりにしてしまう。そして自分という存在自体に苦しんでいる一成を見て、智之は好きであるが故にとある決断を下す。
これまで謎の部分だった過去や祖母との関係もすべてが明らかになり、ようやく読者としても読みながら霧が晴れた気分になりました。いろんな関係が修復されていく中で、智之が自分の進むべき道を決めて、自分自身を見つめなおす展開は、なかなか味わい深かったです。
また一成との関係も、段階がいくつもあり、そのたびに二人の関係が根底は同じだけど変わっていくところが現実味がありました。
全体を通して意外な展開というわけではなく、ある意味まあ予想はできる範囲でのストーリー展開でしたが、だからこその密度の濃さと深みがあったと思います。
一つ気になったのは、ラストの終わり方。ずっと丁寧に書かれていた分、微妙に尻切れ的だった感じがしました。
その分後日話がついていて補完はされているのですが、その尻切れ感に星4つとさせていただきました。
一気に三冊まとめて読むのもオススメです。
最初と途中、そして後半で一成ががらりと変わり雰囲気が違って面白いです。
逆に終始一貫して態度が変わらない智之の態度にも味わいがありました。