たいした映画ファンでありませんでしたが、フランス語をだいぶ忘れかけてきたので早速視聴してみました。サスペンス物だけに、ドラマ作家以外の登場人物は言葉数が最少限で、しかもパリ風の特有の早口でないので、フランス語初心者にも、非常に聞きとりやすいフランス語となっています。灰色の空の下、冬のニースが舞台になっており、観光地のニースを思うと失望します。
内容は、とにかく途中から目を絶対離せなくなるほど面白く、登場人物達の絶妙な心理交錯があり、大人の味そのものです。にぎやかで明るい雰囲気ではないので、若い人達向きとは言えません。少なくとも、男女の愛情の機微、欲望などによく通じていないと、この映画の魅力は殆どわからないでしょう。年齢的には40歳代以降の人達向きです。
大人の情事を描きながら、これほどセックス描写がほぼゼロというのも、ちょっと珍しいかもしれませんし、それが逆に何度見ても飽きない上品さを感じさせます。アラン・ドロンの魅力も大きいし、昔風のフランス映画の製作はそうした節度が普通だったようです。
フランス映画はしばしば理屈が多すぎたり、”インテリ好み”重視でうんざりさせられることが多いのですが、心理展開の重視という点では、ごく普通の日本人でもこの作品はすんなり受け入れられるはずです。