見る前は、切ないラブストーリーかと思いましたが、
実際はナチスをあつかったシリアスな物語です。
15歳のマイケルと21歳年上のハンナとのひと夏の恋は、
マイケルのその後の人生に決定的な影を落とすことになります。
突然、ハンナが去って、数年が経ち、彼が法学を専攻するようになったとき、
二人は再会を果たします。
ナチスの戦犯として裁かれるハンナ、それを傍聴するマイケル。
ここから、過去にどう対処するかということを問う深い物語になってゆきます。
誰にも言えない秘密を守るために、彼女は窮地に立たされます。
マイケルはハンナを助けようと思えば助けられたのですが、
過去を受け入れ誠実に愚直に生きようとする彼女の意を汲み、
手を差し伸べません。
彼女の意思を尊重することと、罪を軽くすることの間で彼は苦しみます。
そして、刑に服する彼女に彼は本の朗読テープを送り始めます。
私には、
彼が本質的に過去と向かい合おうとしなかったように思えます。
甘い思い出が苦悩の源泉になってゆきますが、
悲劇のヒーローを気どって、彼女に深く関わろうとしない。
安全な場所から朗読テープを送ることによって、
彼女を支えますが、直接会いにいこうとはしません。
彼女のプライドを傷つけないという名分によって心の葛藤をごまかしているようです。
自らの不遇を罪の言い訳に使わないハンナは潔いですが、
過去を捨てることはできない不器用さが痛々しくもあります。
過去を捨てようとしたマイケルも過去に現在を規定され、逃れられません。
本作は、過去という厄介な代物との向き合い方の物語とも言えます。
官能的な前半と、シリアスな後半の展開の対比に心を鷲づかみにされ、魅了されました。
描かれなかった彼女の幼少期のことを知りたいという思いも残りました。