女性同士の恋愛を中心に描いてきたやまじえびねが
新境地を開拓した長編と言える。
ゲイ男性に恋をした、美術史専攻の大学院生の女性が主人公。
性愛を超えた愛、性と暴力の問題がテーマになっているが、
作品全体は重くなりすぎず、やまじえびねらしく、洗練された
タッチで描かれている。
また、ストーリーはありきたりの展開ではなく、意外な方向へ
どんどん進んでいき、サスペンス小説を読むような面白さが
あった。ゲイ男性同士の愛と確執を描いた箇所は、ジャン・ジュネ
の小説のような妖しい魅力があって引き付けられた。
いつもながら登場人物がみな魅力的だ。主人公の女性は受動的で
弱すぎる気がするが、自分の弱さが自分と他人を傷つける、という
台詞にあるように、そういう自分を認識している知的な人間でもある。
装丁も美しいのでおすすめ。