この映画から大島渚の映画はかなり変わった(『愛のコリーダ』から変わり始めているが…)。
まず、本作は映像の美しさが印象的だ。山村風景も屋内も映像はうっとりするほど(見事な撮影・美術・照明・小道具・等々)。映像音楽共に(外国人の考えている)日本的なオリエンタリズム全開だ。(監督賞獲得はそこいらへんも含まれてのことのような気がする)
予算規模もかなり違うのだろう。この部分だけでも、これまでとはかなり変わったといえる。
だが大島渚の変化はそれだけではない。
いままでの大島渚は社会性の強い闘う作家といった印象だった。作品には政治的な色彩が反映されていた。前作『愛のコリーダ』にしても(内容自体は政治的ではないものの)検閲との闘いいう問題があり、らしさは健在だった。
だが、本作にはそういったものはない。(もちろん創作者としての闘いは強烈なのだが)
監督の興味が政治から離れ次の段階に入ったことをこの映画から感じる。本作は男女の愛がテーマであり、それに集中している。(余談だが、親子や家族愛についての描写は弱い。そんな意味でちょっと子供が可哀想だった)
男女の映画だから主演の二人が重要だが、今回も素晴らしい。藤竜也もよかったが今作のMVPは吉行和子だろう。自分勝手とも言える役柄なのに可愛らしく妖艶でなんともいえない魅力をはなっている。(そしてなによりエロい。ここ重要です!)
そして、この映画には怪談映画(ホラーではない。あくまで怪談)の側面もある。
昔話にありそうな粗筋(この映画は実話に基づいているとのことだが)や、幽霊の現れ方(←結構スリリング)。純日本的映像や音楽も含め古典的な怪談映画の形式を十分に備えている。(古井戸を下から見上げる映像は怖かった…)
怪談映画として本作をとりあげることは少ない。愛の映画なのは確かだが、怪談映画の秀作としての評価がもっとあってもいいとおもう。
『愛のコリーダ』と『戦場のメリークリスマス』に挟まれ今では地味な印象だが、大島渚の転換期を示す秀作でもあるし、もっと評価されていいと思う。
ソフトについては、フォトギャラリーと予告編程度だが大島渚、藤竜也、吉行和子のインタビュー等が含まれた詳細なリーフレットが含まれ、なかなか良いと思う。