サイコ・サスペンスの先駆者で且つ本格ミステリーの書き手としても一級品の腕を持つ巨匠ニーリイの1969年に書かれた驚嘆すべき処女作です。ニューヨークの出版社社長マイクの元へある日、日時を指定してサンフランシスコで殺人計画を立てているという内容のP・Sと署名された手紙が届く。業績不振なマイクは起死回生を狙い、編集部長である妻のジーナを連れて空路現地へ飛ぶ。電話でアパートに呼び出された彼は、まだ暖かい女の死体を発見し、ジーナも何者かに襲われるが危うく難を逃れる。罠に落ちたと思った夫婦は、逃げるようにニューヨークへ引き返す。精神科医の治療を受けているマイクの娘キャロル、その夫で副社長デイヴィッド、彼の秘書リタ、会社の法律顧問でキャロルが若かりし頃仲の良かったサムらが登場する。帰る早々マイクは警察に呼び出され、サンフランシスコ市警のフレンドリー警部によって殺人罪で逮捕されるのだが・・・・。
マイクという個性の強い人物を中心に物語は展開して行きます。殺人者が恐喝者である女を殺すシーンや登場人物の心理描写が効果的に挿入されて、読者に何が真実なのかを最後まで迷い疑わせます。やがて解き明かされる戦慄すべき事件の全貌とは・・・・? 勿論それは書けませんが、遡って読み返すと作者は巧みな伏線を張って手掛りを残してくれています。けれども、恐らく大半の人がその意味合いに気づかないまま通り過ぎるでしょう。また、本書に於いて作者は終止一貫してフェア・プレーに徹している事を私が保証致します。読み終わって、久し振りに見事に騙されたなというミステリーの醍醐味(美酒)に酔っぱらいました。著者をこれまでご存知でなかった方は、彼の過去に訳された作品も探してぜひ読んでみて下さい。どの作品も傑作が目白押しで、決して後悔する事はないでしょう。