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だから、野呂との恋愛にいたる過程は案外あっさりしている。物足りなく感じられるかもしれない。しかし、この小説の真髄はその後のマヤの心にあるのだ。愛とか恋とかには興奮しない、という柿村との出会い、愛する妻子を捨ててまで一緒になろうとした女に事故死された拝島との一夜、時とともに次第に野呂のしがらみから解き放たれていくマヤ。
マヤの友人菜穂子がいう「マヤには、恋に生きるためのたっぷりした自由と時間があったじゃない。きっとそれはこれからも、変わらないんだろうと思う。」という事実は、ラストにきて説得力を持った。
黒地にピンクのタイトルと帯、赤の扉、小池氏らしい潔さが感じられる装丁もよいです。
取り残されたマヤがどれほど傷つき苦悩したかは,文中から胸が痛くなるほど感じ取れる。切ない。
そのマヤがいつしか別の男,柿村に惹かれ,柿村の腕に抱かれながらも頭の中では野呂のことを考えてしまう。切ない。
やがて,いつしかマヤも野呂を想う気持ちに整理を付け,新たな一歩を踏み出すことになるけど,それは柿村のおかげなのか。流れた時間がそうさせたのであって,柿村はそのきっかけを作っただけなのでは。。
「恋の傷は治すのではなく,傷があったことを忘れるぐらいに埋めてしまうものだ」という柿村の強い気持ちが,弱り切ったマヤの心に響いたのは事実だろう。
傷ついた女性がやがて立ち直り歩き出すまでの物語なのに,傷ついたとはいえ,野呂のことを思いながらも別の男に抱かれ,別の男の肌を欲する気持ちは,読んでいて切なかった。
誰と寝なくても,やがて時間が忘れさせてくれたのに。と思ってしまうのは,男の身勝手と非難されるのは十分分かっている。。。。
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