’07年1月から11月まで朝日新聞に連載された作品。
高橋一家は夫婦と中2、小4の子供ふたり、そして夫の母親が同居する、どこにでもいそうな5人家族。食品メーカーに勤める夫が、東京本社から田舎の支店に左遷され、築百三年の古民家を借りて移り住むところから物語は始まる。一家のみんなはそれぞれ、これまたどこの家庭にもありそうな不満や、問題を抱えており、さらにこの新しい生活が不安だ。
しかし、この家に居ついている‘座敷わらし’の存在がそんな一家を変えてゆく。田舎暮らしが慣れてゆくのにしたがうように、初めは恐る恐るだが、次第に‘座敷わらし’を中心に、バラバラだった家族が一致団結してゆく姿が独特の萩原節でユーモラスに描かれてゆく。夫は「仕事と家庭」「妻との夫婦の絆」「子供たちとの絆」を、妻は「夫との夫婦の絆」「子供たちとの絆」「姑との関係」、夫の母親は「老いからの解放と前向きな姿勢」、そして子供たちは新たな友人たちとの「友情」「親子の絆」を取り戻してゆくのである。
また、‘座敷わらし’にまつわる悲しい由縁も、いたいけで泣かせてくれる。
本書は、萩原浩のサラリーマンや若者や主婦の奮闘物語の延長線上にある、彼らしい、家族をめぐる、本当のささやかな幸せとはなんだろうと思わせる物語である。
そして私は、ファミレスのウエイトレスの最後のセリフで、なんか救われたような感じがした。