聴く前に歌詞集の最後に載っていた彼女のイタリアで思い出を読んでいたら涙が出てきた。これまで漠然と外国に留学する程の人たちは結構裕福な境遇で音楽だけを勉強してるんだろうと思っていたが(良い例が「のだめカンタービレ」を読むとわかる)、彼女の場合は出だしから絶体絶命の状態で始まったのを知った。異国で一人で生活してみて如何にこれまで恵まれていたかと思い知らされ「人間力を試されているような戦いの日々」だと書かれている。そんな逆境のなかで歌を勉強して一体何になるのだろうかと自問し、それでも歌が大好きで歌に救われたという。こうした経験は何も彼女だけのことではないかもしれないが、経験をどう生かすか生かせるかは個人の資質によるものだろう。前作「あなたがそばにいたら」は本当に素晴らしく日本人声楽家がここまできたかと思う会心の歌が聴けた。歌に込めた思いの強さは並でないだろう。それが声を通して聴く者に届く。姿からは想像できない程力強い声の持ち主で、日本人声楽家でフォルテシモで歌う声に心地良さを感じたことはこれまで全く無かった。しかし彼女の声は本当に美しくどんなに声を張り上げてもそれは変わらなかった。見事だと思う。