まず、最初にハッキリと示しておかねばならないことは、本書は、決して愚管抄の「全訳」ではないということです。もちろん、必要に応じてよく練られた現代語訳が挿入されることは多いですが(特に1章『愚管抄』を読む)、本書全体から見れば、訳の分量は少ないです。(「全訳」は本書と同じ大隅先生よって、これまた本書と同じ講談社学術文庫の一冊につい最近収められました。素晴らしいことです!)
では、本書の価値は何処にあるのか。
それは、この余りにも難解で晦渋な歴史的・哲学的古典を、慈円その人の生い立ち、慈円の叙述文体の特徴、慈円の「歴史観」の本質といった諸要素について歴史的背景をも深く深く織り込みながら精緻に検討し尽くして、徹底的に解きほぐすことで、読者に対して『愚管抄』の「読み方」そのものをきわめて判りやすく示してくれている点であろうと思います。さすが、慈円に向き合うことウン十年、中世思想史の碩学大隅和雄先生であります。
この難解な古典を前に、立ちすくまずに、歩みを進めてゆくには、どうしたらいいのか。愚管抄を自分なりに詳しく読んでいる途中の人にも、これから挑戦してみようと思っている人にも、「そもそも愚管抄ってどんな話なの、教えて!」という人にも、とりあえずオススメしたい一冊です。
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以下、参考までに目次を略記。
I 『愚管抄』を読む
一 保元の乱を考える
二 世の中を見つめる
三 歴史を遡る
四 道理を説き明かす
II 『愚管抄』を概観する
一 慈円の生涯
二 『愚管抄』の世界
III 歴史を見る
一 怨霊の力
二 仏法の役割
三 「家」の立場
IV 歴史を書く
一 追体験の叙述
二 聞き書き
V 歴史をとらえる
一 世の不思議
二 神話から歴史へ