巻頭の部分から引き込まれるように読んだが、「計画の無い実行は時間つぶしに過ぎず、計画の無い検証は自己陶酔に陥る」と言う一節は、僕自身のダメ社長時代を思い起こさせられて背筋が伸びた。
「目標を設定する目的は、目標達成の為ではなく、現状とは異なる行動を喚起していくことにある」は、将に正鵠。計画数字未達の取締役会では「罪の償いではなく、次の行動計画」を求める。と言う考え方にまっすぐ繋がり、「リーダーは数字の背景にある人間の行動を促すことでしか、数字を変えることが出来ない」でしっかりと腹に落ちる。だからこそ、経営者の夢やビジョンが全ての源泉なのだという、氏の哲学が見えてくる。
一般に経営指導書は、成功を収めた大社長の精神論か、コンサルタントなどのハウツー物が多く、僕は余り読まずに来た。辻氏は、信念を持ったキャピタリストとして正道を説いているところが、それらとはまるで違う。哲学の下敷きがありつつ、VCとしての誠意で貫かれているから、一言一言がずしりと思い。しかも、首尾一貫し、整然と整理されていて、全てそのまま明日からの現場に役立つ示唆に富んでいるところが格別だ。つまり、What for と How to の両方がこの一冊に凝縮している。
「悪いことは構造的な要因に基づく出来事、良いことは偶然の出来事、であるのが通常である」は、私を戒めてくれる。将棋の羽生名人の言を思い出した「勝つは偶然、負けるは必然」。ああ、僕ももうひとつ、強い人間になりたいと、大きなエネルギーをいただいた気がする。
この本は、ベンチャー企業の経営者向けに書かれているが、全ての、仕事に志を持つ人への熱いメッセージだと感じた。