大谷光真氏とダライラマ氏の対談は、信心についての考え方、そして、国際情勢についての態度に大きく相違があるにもかかわらず、協力し合うことを誓い、対談を終えているのは、非常に素晴らしいことだと思う。
『朝には紅顔ありて』『世のなか安穏なれ』に比べて、非常にパーソナルな印象を受けるのは、私だけではないでしょう。『愚の力』は、『さとりと信心』と『まことのよろこび』と並ぶような主著といってもよいもので、しかも前2冊は法話集なのに対して、1冊という単位で考えられた本である。大谷氏は1冊単位で、ものを書くのは、初めてだろうから、その構成力には驚かされる。ものすごく考え抜いたと推される。巻末に教書を採録されたのも、35歳の時に、門主としての立場でかかれた文章を、個人としてぶれずに、ここまで深めたという、代表という立場に甘えない姿勢が見て取れる。仏教を語る際に、世の中のお坊さんのほとんどが極端な話に終始する中で、「厳しい体験がなくても、阿弥陀如来に救われていく道をあきらかにしなければならない」(p95)とある意味で豊かな成熟した社会にあって、「切なる生き方」を全体性を損なうことなく、真摯に問うている。
最良の仏教入門であり、今年一番の仏教書である。