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12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
マニアックな翻訳,
By 何処かの馬の骨 (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 意識に直接与えられたものについての試論 (ちくま学芸文庫) (文庫)
内容については今更どうこう言うまでもない。ベルクソンの実質的なデビュー作にして代表作である。彼の哲学の全てはここから始まった。現在、文庫本で簡単かつ安価に入手できるものとしてはこのちくま学芸文庫版と、岩波文庫版だろう。つまり選択肢は二つあるわけだ。平明な訳文と、シュヴァリエの『ベルクソンとの対話』などを引用しつつベルクソンの生い立ちも綴った、初学者にも親切な作りになっている岩波文庫版にたいして、こちらはもう少しマニアックな作りになっている。 どういうことかというと、これまで鍵語としては重要視されてこなかった語にたいしても敢えて原語を付しておくことで、新たな鍵語として注目させることで、多種多様な読みの可能性を示唆しているのである。もっとも、こう言うと、現代フランス哲学(特にドゥルーズのベルクソン論)を念頭に置いて造られた現代思想のおもちゃのように思われる向きもあるかもしれないが、巻末の合田氏の解説などを参照してもわかる通り、この翻訳の意図の持つ射程はもっと間口の広いものである。特にベルクソン哲学における「他者への共感」という点にたいする着目は、ただ単にレヴィナスとの類似点を発見して喜ぶというような稚拙なものではなく、「純粋持続」というものを我々の実地の経験に則して理解しようとすれば避けて通れないものであり、また晩年の主著『道徳と宗教のニ源泉』を如何に読み、理解するかという点にも大きく関係してくる。少なくとも、これはドゥルーズのベルクソン論を叩いても出てこない着眼点である。 加えて、上記の合田氏の解説とは別に、共訳者の平井氏による、ベルクソンの自由論を「表現としての自由」という点に着目して丁寧に検討した解説も読み応えがある。既に岩波文庫版や他の翻訳を持っている人にも広く薦めたい。
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