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意味論的転回―デザインの新しい基礎理論
 
 

意味論的転回―デザインの新しい基礎理論 [単行本]

クラウス クリッペンドルフ , Klaus Krippendorff , 小林 昭世 , 西澤 弘行 , 川間 哲夫 , 氏家 良樹 , 國澤 好衛 , 小口 裕史 , 蓮池 公威
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

[日本語版への序文]
本書は、まず、デザインという行為とその知の建設にとって、大きな「意味論的転回」の二つの意味で、きわめて啓発的な著作であると言えます。
ひとつは、本書が、工業化社会を脱し情報化社会のますます拡大・変容する現代デザインの問題群や対象領域の展望を背景に、あるべきデザイン行為のための知の基礎的な体系の果敢な変革とリ・デザインとによって、未来のヴィジョンの生成に開かれたデザイン行為の学の基礎理論の建設に大きく貢献しているからです。しかも、ここでは、デザイン学を行為の学、世界を改善するための学として認識していることも重要です。
いまひとつは、著者自身が1950年代から60年代にかけて、デザインの知の編成にきわめて先覚・先鋭的であったドイツのウルム造形大学で、学生として、かつスタッフとして経験したデザイン思考の革新性と多様な実験とを批判的に継承し、それを越えて、1980年代初めの--広く世界に波及した--プロダクトセマンティクス(製品意味論)という方法論の提起を出発点に、広範な人工世界の「意味」の先駆的なデザインの基礎理論を体系化した、まさに個の情熱的な思考と行動のマイルストーンでもあるからです。
ここで、意味論的転回として提起されている「人間中心性(human-centeredness)」というデザインの基本概念に対して、その意味を基礎づける思想の主な文脈を見ていきますと、つぎのような人や思想の営為が挙げられています。プタゴラス(人間尺度論)、ゲーテ(色彩論)、マトゥラーナとヴァレーラ(自己制作/オートポイエーシス理論)、ヴィーコ(制作的行為の知)、グラザースフェルト(基礎的構成主義/生世界の基礎づけ)、ユクスキュル(意味の環境世界)、ギブソン(アフォーダンス)、サピアとウォーフ(言語相対論)、ウィトゲンシュタイン(後期の言語ゲーム/言語使用)、ベイトソン(精神の生態学)、ミード(象徴的相互行為論)、...などです。
これらの思想ないし世界認識に通底するのは、私のことばで言えば、自然・人間・文化の生命性といった「生の意味」を思惟の源泉とする「生知」とも呼べるエピステーメ(知)の様態を形成するものです。これらは、すべて、エコロジー、風土・歴史・言語・文化の多様性、人間の身体性や生の基盤、新たな社会的共同性や合意形成のプロセスなどを視野の中心に置くべき、現代のデザイン行為の学を基礎づける総合知の形成にとって不可欠です。ここに、自然科学とは異なる--著者の言う--人間中心のデザインのための科学、その新しい基礎理論への、明らかに意味の「転回」が示されています。
本書が示す意味の転回の重要な観点のひとつは、デザインという行為の理論化--学の形成--への志向性と果敢な挑戦で、「デザインのための科学はデザインの専門性の内省的な再生となる」という認識です。いいかえれば、デザインはデザインの知によってリ・デザインされるという認識で、物をデザインするという実践から、実践を方向づける言語をデザインすることの重要性への転回です。知とは言語化されること、そして、その言語の発話・言表行為をデザインのディスコース(discourse)と呼んで、新たなデザイン行為と位置づけていることです。このデザインのディスコースは、本書における多くの概念提起なかでも、主要な鍵概念となるものです。こうした新たなデザイン言語の生成過程の形成が、従来のデザイン対象をはじめ、インタフェース、メディア、ソフトウェア、サービス、システムなどを越えて、さらに社会的共通資本の形成や地域社会再生などの新たな社会的な問題群にも拡張可能なデザイン行為の理論的な展望を広げています。
著者のクラウス・クリッペンドルフ教授は、私にとっては、戦後のバウハウスといわれたウルム造形大学の1956年~57年(4期生)の基礎課程をともに経験して以来の畏友のひとりです。私たちは他のクラスメートとともにそのウルムの実験の多様な種子を源泉として、批判や相互作用を深めながら、世界の各大学で、それぞれ固有のデザイン行為の学や実践を展開してきました。彼はウルム造形大学でさらに工業デザインのデイプロムを取得しました。彼がデザインの研究者・教育者である以前に、きわめて精緻な構想と構成とで知られる優秀な工業デザイナーであることは、本書のなかの自らのデザイン事例(図9.6/図9.10)でも明らかです。彼がウルムでのデザイン専攻以前に工学を修めていることも、そのデザインの背景を成しています。一方、そうした実践者としての豊富な経験知と後に研鑽したコミュニケーション科学の卓越した研究者としての知の合一が、また、本書の理論構成の統合的な基盤とその固有な特色を形成していると言えます。
なお、最後の章のウルム造形大学での経験に対する彼の見解は、私には、共有するものについて主要な点で一致するところも多くたいへん興味深いのですが、一方、当時の同大学が提起したデザインの基礎理論の編成やマイスター(教授)たちの思想は、今日なおアクチュアルな議論が可能なデザイン知の豊富な資源であり、本書の批判的な記述はその再検討のための有益な議論のひとつともなるものだと言えます。
本書はその刊行が世界的に待望されているデザイン書であり、このたびの日本語訳の完成を、日本におけるデザイン理解の転回と変革のために--著者ならびに訳者とともに--喜びたいと思います。
向井周太郎

出版社からのコメント

理論と実践を包括し、絶妙に構成された輝かしい著作である。クラウス・クリッペンドルフは、大胆な学際的なアプローチによるデザインの意味論で、彼の専門性を発揮した。本書は体系的デザイン・ディスコースを明らかにし、確かな学識に基づいた稀にみる批判とデザインの実例を読者に示している。...様式を一新し、意味論を深化させ、関係のある分野において我々が知識を共有することに価値を与えている。デザインのための科学を提唱する貴重な提案であり、デザイナーにも、そうでない人にも等しく読まれるべきである。時間を超越した傑作が情熱的に概念化された。
ハリマツン・カリド(Halimahtun M. Khalid)教授、マレーシア大学デザイン・エルゴノミック学部ディレクター

...デザイン思考のための大著である。クラウス・クリッペンドルフの哲学は、我々が人工物に与える意味という観点で、どうやって人工物を作り、使うかということを述べている。それは、ユーザーとステークホルダーとの創造的な関わりに基づき、専門的なデザイン実践のための人間的かつシステマティックな基礎を築いた。クリッペンドルフの知的な旅は、今日のデザインとデザイン研究の中心テーマを反映し、新しいデザイナーがその分野に進む自分の道を考えるのを支援する。...
ケン・フリードマン(Ken Friedman)教授、ノルウェー経営大学院、デンマーク・デザイン・スクール

この果敢な労作は、系列的に自然科学とは別のもので、デザインのための具体の科学を展望したものである。...それが、デザイナーに生産品と環境を妥当なものとする確かな根拠を与え、技術ではなく人間を中心に据えた体系的なデザイン方法と、研究のための認識論というよりはむしろ、世界を改善するための認識論を提案し、...それゆえに、私たちのデザイン研究にとって未来に開かれた大きなステップである。
向井周太郎教授、武蔵野美術大学名誉教授、基礎デザイン学科前主任教授

デザイン理論を新しいレベルに位置づけ、...見事にウィトゲンシュタインを基にして、アフォーダンスの古典的な思考を一般化した。...読む価値がとても高い本書は、特に我々がグローバル経済において、グローバル経済のためにデザインする際に取り組む課題の今日的な意味を明らかにしている。
ジョン・シーリー・ブラウン(John Seely Brown)、ゼロックス社主席研究員兼パロアルト研究所ディレクター

著者について

クラウス・クリッペンドルフ(Klaus Krippendorff)は、イリノイ州立大学で学位を得て、現在、ペンシルバニア大学、Annenberg School for Communication のサイバネティクス、言語、文化研究領域の教授である。彼は、コミュニケーション、サイバネティクス、そしてシステム理論の論文を多く発表し、Information Theory(情報理論)、Structural Models for Qualitative Data(定性データの構造分析)、a Dictionary of Cybernetics(サイバネティクス事典)を刊行し、また、Communication and Control in Society の編者、The Analysis of Communication Content, Developments in Scientific Theories and Computer Techniques の共編者である。彼の『メッセージ分析の技法----「内容分析」への招待』(Content Analysis, an Introduction to Its Methodology,)は、日本語を含む4 か国語に翻訳され、原著は、最近、増補されて再版された。彼は、AAAS(the American Association for the Advancement of Science)、ICA(the International Communication Assoc!
iation)、NIAS(Netherlands Institute for Advanced Studies)、そして日本の基礎デザイン学会で編集委員やフェローをつとめている。
クラウス・クリッペンドルフは、ウルム造形大学を1961 年に卒業し、デザインの受賞歴も有する。産業のためのデザイン指導やコンサルタントをし、Innovation 誌やDesign Issues誌で製品意味論の特集を共編し、米国科学財団(NSF)のために「情報時代のためのデザイン」の報告書をまとめ、デザイン意味論の国際ワークショップを多く開催している。デザインとそれに関連する領域の雑誌への寄稿も多い。彼はデザインのための人間中心のアプローチを提唱し、意味と対話性をデザイン思考の中心的な課題にしようとしている。クラウス・クリッペンドルフの現在の関心は以下の4 点である。認識論的に、社会的リアリティの構成における言語とディスコースの役割を探究すること。批判理論の研究者として、束縛と解放の条件を明らかにすること。サイバネティクスのメタ理論の研究者として、自己と他者の再帰的な構造の研究。そして、デザイナーとして、技術と人文の新しい統合を試み、デザインのリ・デザインを提案することである。
[訳者紹介]
小林昭世 武蔵野美術大学造形学部教授
川間哲夫 和光大学表現学部教授
國澤好衛 産業技術大学院大学教授
小口裕史 早稲田大学教育学部・武蔵野美術大学講師
蓮池公威 富士ゼロックス株式会社、ヒューマンインターフェイスデザイン開発部
西澤弘行 常磐大学人間科学部准教授
氏家良樹 慶應義塾大学理工学部助教
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