アフリカと日本で、チンパンジーの心の研究を行なってきた著者が、30年以上の研究成果を読み易い形でまとめたもの。著者とその共同研究者たちは、独創的な工夫をしながら、お馴染みのアイやアユム、その他多くのチンパンジーの仲間たちから、「こころの秘密」を引き出していく。表情豊かなチンパンジーの大人や子供たちの心は、人と比較してどこが共通して、どこが違うのか。その解明のプロセスは、推理小説を読むように楽しい。親子関係や社会性、道具の使い方など、チンパンジーと人との近さに、あらためて「進化の隣人」であると納得し、また彼らがこの上なく愛おしくなるような本である。
著者は、チンパンジーと人との違いは、「想像するちから」にあるとする。人の希望や絶望もこの「想像するちから」を身に付けたところから始まったという。人は、系統樹でチンパンジーから分かれてから後、言語や文化、あるいは文明は飛躍的に発達したかもしれないが、その代償としてチンパンジーたちの「明日を思い煩うことのない心」の世界からは遠く離れてしまった。そんなことを深く考えさせる本である。
アフリカではチンパンジー、ゴリラ、オランウータンのどれもが数が減っているという。著者らは「緑の回廊」プロジェクトを立ち上げ、植林を行なうことで、生息地の減少に歯止めを掛けようとしている。プロジェクトの成功を願わずにはいられない。