書評を読む事は嫌いではない。購読している「朝日」の日曜書評欄も、取り合えず目を通している。ただ、根っからのエンタメ好きなので、学者さんの手によるお堅いモノにはどうしてもパスしたくなる。そんな中で例外的存在なのが、巽孝之。それは何も自分が籍を置いていた大学の教授だからと言う訳ではなく、アメリカ留学時代のリーディンググループ以来培われた幅広いアメリカ文学への精通した知識と考察に感心するのと、読書する事への純粋な悦び、そして何より好きな本を気の合う仲間と語り合うとのスタンスに親近感が持てるからだ。
著者自身、無数の本を出来るだけ読破し取捨選択して選んだ1冊について、的を射、かつ読者の気を惹くような文章を書く書評家は、まるで即興演奏に長けたミュージシャンみたいと定義付けるが、難解な言い回しを使わず、普段手に取る事などない作品たちへの興味と関心を抱かせる話術はさすが。
本書は、この10年間余りの間、朝日を始め有力紙に寄稿していた物を集めた労作。各紙毎に異なる俎上に挙がる本の選定方法等の裏話も入れながら、文学から思想史、評論から画帳、アカデミックな物からエンタメ本までが縦横無尽に語られる。
かなりのヴォリューム感だが、読む者の嗜好に応じて、その時の気分で、拾い読み出来るのが楽しい。
知的好奇心と情動的欲求を刺激し、未知の本との幸福な出逢いを導いてくれそうなガイドブックとしてお薦め。