よく作り込まれた本であると感心させられました。数式を一切使わずに最先端の宇宙論〜惑星科学までが過不足無く解説されており、またリズム感のある文章に乗って研究の興奮や感動がドラマチックに展開されていきます。その辺の小説や文学なんかよりも遙かにドライブ感に溢れ、読者をグイグイと“惑星学”の世界に引きずり込むこと間違いなし。
特に秀逸なのが、序章。宇宙論の発展・進化の紹介から、太陽系外惑星の発見、日米の研究体制の違い、そして21世紀における惑星学の台頭まで、あらゆる話題と研究者哲学がわずか16ページに濃縮して詰め込まれています。そしてその語り口も熱い。
そして第二章以降、まさにその「期待感と息吹」が全編にわたってこれでもかというほどに展開されます。特に一般の読者にとっては、第六章の系外惑星発見にまつわるエピソードは非常に面白く読めると思います。系外惑星探しにまつわる失敗と成功の歴史、そしてそこで繰り広げられた研究者同士のダイナミックなやりとり。
すごいドラマがあったんですよ、世紀の大発見の裏には。
さて一方、実は本書は惑星科学を専門に研究している人にとっても、必読の書であるといえます。数式を一切使っていないため、パッと見は“教養本”の雰囲気をしているのですが、とんでもない、これは惑星科学の基本知識と最先端の問題意識がぎっしり詰まった“理学書”でもあるのです。特にこれから惑星科学を学ぼうとしている学部生、あるいは断片的な知識が溜まりつつもなかなか頭の整理がつかないでいる大学院生にとって、これほどコンパクトにまとまった“読み物”としての教科書はおそらく他にはありません。また井田さんの研究者としての生き方や哲学に触れるという意味でも、貴重な一冊だと思います。