現代は情緒の時代であることは、日常生活でも感じることはあります。同時に、近代以降に登場する合理性や論理などといった価値観に疑いの目が向けられているという風潮もあると考えられます。そのような意味で、私たちは「情緒」の時代にいると思います。日本においては、大局的にみると明治維新から高度成長までは日本の近代化の時代であり、それらを性急に推進するためには徹底した合理性と、論理的思考が必要であったと考えられます。また、その間に共産革命や大戦を経験しています。
「情緒から論理へ」というテーマであれば、やはり、人間の理性の限界はなにか、理性を突き詰めた世の中はどのようになるか、といった理性(論理)の有効性と危険性を示して欲しかったと思います。それを踏まえたうえで、情緒の危険性を示し、論理にも危険な側面があるけれど、情緒が先行した世の中に、論理の有用性を見出す試みがなされていれば、題意に沿った著作であったと思います。