内容紹介
プライバシーにかかわる権利は、著者が指摘しているように、人間生得の「自然権」ではなく、近代社会が成熟するにつれて、その重要性と現実性がようやく広く理解されるようになった。つまり、この権利は、私たちにとってぜいたくな新しい権利なのだが、それだからこそ貴重な権利でもある。しかし、「言論の自由」などその他のより重要な権利に比べると、その優先順位が落ちるのはやむをえない。第二に、プライバシー権は、「情報プライバシー」にかかわる「自己情報管理権」などと呼ばれる権利よりはより広い権利であって、各人がもっている「不可侵の私的領域」を物理的・情報的の両面で侵されない権利である。他方、「自己情報管理権」なる観念それ自体は、「情報プライバシー」よりは明らかに広い観念、いや広すぎて現実的にはほとんど権利としての意味をもたない観念である。個人の住所・氏名などは、「自己情報」には違いないが、そのままでは「プライバシー」を構成しない「個人基本情報」にすぎない。「プライバシー情報」が発生するのは、病歴や特殊な趣味嗜好など他人に知られたくないセンシティブな自己情報が、自分の「個人基本情報」と結びつけられてしまった場合であって、それが公表されると、「情報プライバシーの侵害」が発生するのである。だから、企業が保有している顧客名簿や大学の卒業生名簿などは、そのままではプライバシー情報とはいえない。それが外部に流出したとすれば、当面損なわれたのは当該組織の「情報セキュリティ」であって、個人の「情報プライバシー」ではない。
内容(「BOOK」データベースより)
プライバシーは自然権ではない。生活必需品でもない。主張のしすぎは協調・共生の社会の原理を損なう。私的領域の自律権や私生活の平穏・静謐を護るプライバシー権にもっと市民権を。