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悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書)
 
 

悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書) [単行本]

中川 右介
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 998 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

三百五十年にわたり歌舞伎界をリードしてきた市川宗家。十二人の團十郎はいかなる人物だったのか?舞台で刺殺された初代の血塗られたエピソード、「劇聖」と呼ばれる九代目の苦悩…。華やかな芸とスキャンダルに彩られた血筋を描く。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

中川 右介
1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「クラシックジャーナル」編集長、出版社「アルファベータ」代表取締役。海外の出版社と提携し、芸術家や文学者の評伝の翻訳本を出版する傍ら、自らもクラシック、歌舞伎を中心に精力的に執筆活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 303ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2011/04)
  • ISBN-10: 4166608053
  • ISBN-13: 978-4166608058
  • 発売日: 2011/04
  • 商品の寸法: 17.4 x 10.8 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
昨年2010年は初代團十郎生誕350年。そこで書かれた團十郎家の歴史がこの本。
初代誕生(推定年1660年)から、2010年12月の当代と海老蔵までの歴史が物語風に展開される。
この著者の従来の執筆に比べると、少し取りつきが悪い。
いつもなら、のっけからドラマが展開するのだが、今回は初代のルーツに関する諸説の文献解説から始まるからだろう。

断然面白くなるのは、四代目(襲名1754年)あたりから。
この時代は落語の『中村仲蔵』や『淀五郎』でもお馴染み。
初代仲蔵や、名優・初代市川團蔵が活躍する時代。
團十郎と團蔵とのデッドヒート、さらに松本幸四郎、市川八百蔵、瀬川菊之丞(王子路考)らと、『役者評判記』の位置付けを競う。「大極上々吉」「極上々吉」「上々吉」…。
上方から東に下った中村歌右衛門や尾上菊五郎が登場するのもこの時代。
これらの役者と競いあいながら、四代目は市川一門のみならず、歌舞伎役者全体の「親方」の座をゆるぎないものにしていく。なるほど、なるほど。

この本の帯には【「至芸」の陰にスキャンダルあり】とか、【傲慢さこそ「團十郎」】とか、賑々しい。
その言葉にとらわれ過ぎると、面白さを逃す。
五代目の家訓「…皆々目の下に見下し、蟲のように思うがよし」にこだわっていると、
その前段の「おれさえ出れば見物嬉しがるという心がよし」を見失う。

初代が襲名した時代以降、「役者評判記」も隆盛で、ご見物によって芝居が育てられていった。
客が入らなければ興行は打ち切りになるし、客が押し寄せれば興行は何か月も続く。
ご見物の支持のもとに、芝居はその時代の嗜好をとりいれながら、江戸の街に息づいていった。
こういう歴史も、この本は伝える。

では、競い合う劇界にあって、なぜ市川宗家が必要とされたのか、考えつつ読んだ。
いや、江戸の歌舞伎は市川團十郎家が存続したことで、盤石だったといえるかもしれない。
二代目は17歳、三代目15歳、四代目44歳、五代目30歳、六代目14歳…で團十郎襲名。
若くても、襲名から数年後には座頭に。
座頭の位置は厳しい。ライバルと競い、あるいはご見物に叩かれ、打ちのめされる。
時には刺殺され、時には自殺へと追い込まれる。
それでも市川宗家は存続し続ける。
つぶれない宗家の権威があったからこそ、芸が競え、芝居が残ったのかもしれない。

観客よりも、年功序列に基づく大幹部の意向が強く感じられる、昨今の歌舞伎興行。
「海老蔵はもっと謙虚に」なんて言葉の大合唱。
なに言ってやんでェ。謙虚に、なんて言う人ほど謙虚じゃない。秩序を守りたいだけ。
海老蔵は非凡なのだ。大宇宙、あるいは森羅万象の神々に対してのみ謙虚であればいい。
そんなことを想いながら、読み終わった。
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
これは市川宗家のみならず歌舞伎の苦難の歴史を描いた一冊です。
江戸時代に身分制度の埒外にあった役者たちが幕府の抑圧を逆手にとって芝居を高尚化してゆき、明治維新による価値観の転換というチャンスを活かして見事にステータスを獲得する様は、現代にあっても良き教訓となると思います。つまり、ある業界が発展するには内から価値を高める不断の努力が必要だということです。
また、今の海老蔵、将来の十三代目團十郎が、なぜあの事件に巻き込まれたかも良く理解できました。この書に紹介されている五代目の家訓「皆々目の下に見くだし、蟲のように思うがよし」は、市川宗家のステータスと「團十郎」の名が持つ意味の両方にかかる言葉と感じました。現代に生きる海老蔵もまた團十郎となるため、意識的か無意識的かは解りませんが、この家訓の通り振る舞っていました。芸術家に対しても、芸以前に道徳を強いる社会の中で家訓を守り通した海老蔵が、あの事件に巻き込まれたのは必然であったとさえ言えるでしょう。
この書が素晴らしいところは、記述が丁寧で解りやすく、時代背景の説明もかゆい所に手が届くほどで、ほとんど歌舞伎の知識が無くても楽しめることです。だからこそ、スキャンダラスな内容(刺殺された初代、男色家の四代目等)の記述があっても、それが浮き上がらず、市川宗家の歴史、ならびに歌舞伎の歴史を有機的に構成する必要な一コマと感じられるのでしょう。こうした姿勢は著者・中川右介さんの他の著書にも共通しています。
繰り返しになりますが「悲劇の名門 團十郎十二代」は今一つブレイクしきれない業界の関係者(私の好きなクラシック音楽業界もボウリング業界もw)にぜひ読んで頂きたいと思います。歌舞伎が歩んだ道のりには学ぶべき点が沢山あります。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ib_pata VINE™ メンバー
形式:単行本
 舞台上で刺されて死んだ初代や、当時の社会通念上はOKだったにせよ別れた若衆に少年の売春宿を経営させていた四代目、自殺した八代目などと比べれば、昨年末の海老蔵事件なんぞ小ぃせぇ、小ぃせぇという感じ。

 個人的には、初代の團十郎が築いた勧善懲悪をベースにした荒唐無稽な荒事よりも、同時代の藤十郎とコラボした近松門左衛門の「和事」の方が好きなのですが、地元の成田山に祈願したから子供が授かったなどとPRするタイアップ戦略などが見事にはまり、團十郎という名はスーパースターとなっていきます。さらには、観客が見ている舞台上で役者仲間から本身で刺されて殺されるという衝撃もあり、若い二代目も悲劇のスターに。二代目には江嶋生嶋事件の江嶋も一目惚れして小袖を贈ったそうで、その杏葉牡丹の紋(本来は近衛家の紋)は、市川宗家の"替紋"にもなります。二代目は大阪の佐渡島座で女形・尾上菊五郎と共演、あげくに江戸に連れて帰りますが、せっかく襲名披露したばかりの三代目が22歳の若さで亡くなるという悲劇が襲います(p.76)。

 空位になった團十郎は、12年後に二代目松本幸四郎が四代目として継ぐことになります。現在の市川宗家も、長い間の空位を経て、十一代團十郎を襲名したのは松本幸四郎の長男でした。ともに血縁は途切れていますが、市川宗家の跡継ぎは高麗屋から出るというのは不思議な縁だな、という感じです。そして四代目は再婚の際、身辺整理のため、男の若衆と別れなくてはならなくなります。分かれた男が女形として役者になるのも業腹なのか、なんと、この若衆にはカネを渡して男の子たちが女装して春を売る「かげま茶屋」を経営させます。《初代や二代目は買春はしても、売春業の経営には関与していなかったので、その点でも、四代目は異色の團十郎だった》というあたりは笑いました(p.98-)。市川宗家やるじゃん、みたいな。
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