イタリア北部の都市フェラーラにて名家コンツィーニ家の広大で美しい庭を舞台に、富裕階層のユダヤ人家庭が超然とした態度を取って自分達の世界に引き籠っている内にファシストに因って収容所に送られる様子を銃声の一発も血の一滴も流さずに端正に描写しています。
財力的には決して亡命出来ない訳では無かったのに、他国に比べ余りにもイタリア社会に溶け込み過ぎていた為に時勢を見誤った人々の極めて個人的な、主に幼馴染に恋心を抱く青年の視点で描かれており、ユダヤ人迫害を声高に叫ぶ作品では有りません。
英雄的な行動を取れる人物も一人も出て来ません。
ただ、それだけに、非常に個人の感情に訴える力を持っています。
デ・シーカ監督は俳優陣から実に自然な演技を引き出しており、通常なら感情移入のし難い複雑で誇り高い上流階級の人物達へ素直に共感出来ます。
特筆すべきはヒロイン、コンツィーニ家の娘・ミコルを演じたドミニク・サンダ。
ここでも実年齢より5-7歳程上の役柄を割り当てられていますが、その硬質な美貌と知性、意志の強さを感じさせる細やかな演技は、当時のヨーロッパの監督が競って起用したのも納得の素晴らしい物です。
ミコルを愛し悩む文学青年、原作者バッサーニの分身を演じたリーノ・カボリッキオにも好感が持てます。
変態王子的な役柄の印象ばかりが強かったヘルムート・バーガーがここでは儚げな美貌の病弱・繊細で仄かな同性愛的傾向を持ったユダヤ系美青年を、ユーモラスで俗物的役柄が多いヴィスコンティ映画の常連ロモロ・ヴァッリがユダヤ人ながらファシスト党員、しかも矛盾なく家族を愛する善良な主人公の父親を見事に演じていて驚きました。
美しく撮られた人々の生活と四季が、全て失われてしまう事を観客が悟って居る為に感情が激しく揺り動かされ、言葉を失います。
HDニューマスター使用と有りますが、DVDとしても画質は標準に思えました。
盤の特典は字幕のON/OFFとチャプター・メニューのみですが、字幕も担当した遠山純生氏による40頁の付録リーフレットは、あらすじ・キャスト・スタッフ紹介と共に、封切り直後のデ・シーカ監督へのインタビューを収録した読み応えの有る内容です。
あまりこの分野の映画は観ませんが柄にも無く感動致しました。大いにお薦めです。